「ルーシィ!」
「お、おはよ…」

目が合わない。

ナツはルーシィの頬に手を伸ばした。むい、と引っ張ってみる。

「いひゃい!?」
「変な顔ー」

今日も触れる。ナツが満足して手を離すと、彼女は不満げに膨れた。

「期待したあたしが馬鹿だった…」
「あ?」
「なんでもない!」

ぷい、とそっぽを向いたルーシィをそのままに、ナツはウィルフレッドに目をやった。一昨日――になるのか――殴った頬にはガーゼが貼られている。

「おっす」
「おはよう、ナツ。あの、本当に、ごめん」
「別に、もう済んだことだろ」

神妙な顔つきの彼に手を振って、ナツはにやりと口角を上げた。

「ルーシィにも殴られてみるか?オレのより痛ぇぞ?」
「んなわけないでしょ!」
「お、比べてみるか?ウィル、ちょっと歯ぁ食いしばれ」
「殴らないわよ!?」

ウィルフレッドは無理に作ったような笑顔を浮かべた。

「殴ってくれた方が良いんだけど」
「…おいルーシィ、殴ってやれよ。そういう趣味なんだよ察してやれよ」
「違うからね」

ルーシィよりも早く、すぱんとツッコミが入る。ナツは笑って彼の肩を叩いた。

「解決したんだし、んな気にすんなよ」

ルーシィがナツの言葉に頷いた。

「うん、もう良いじゃない」
「でも…僕のせいで、苦しい思いをさせて」
「あんなの一瞬だけよ」

項垂れるウィルフレッドの横で、ナツは腕を組んだ。

「お前、ずっと謝りっぱなしなのか?解決したの、昨日の昼だろ?」
「そうだけど……でも治ったかどうか確かめに行くって出て行ってから、ルーシィ、戻ってこなかったし」
「ん?」

首が傾ぐ。斜めのままナツはルーシィに目を向けた。

「ギルド戻らなかったのか?」
「あんたが放してくれなかっ…!」

ルーシィは言いかけのまま真っ赤な顔でぱくぱくと空間を噛んだ。きょろきょろと辺りを見回して、まだギルドの入り口付近で固まっていたハッピーを見付けると、跳ねるように席を立つ。

「は、ハッピー!」
「おい?」
「すぐ戻るから!」

逃げたのは明らかだったが、 ナツは追わなかった。自分で言ったからにはちゃんと戻ってくるだろう。
カウンターテーブルに寄りかかると、ウィルフレッドが心底安堵したような溜め息を吐いた。

「解決して良かった」
「……良いのかよ?邪魔だったんだろ、オレが」
「ルーシィが苦しい方が嫌だ」

悪い奴じゃない。

何度目かに思ったそれを、ナツは清々しい気持ちで受け止めた。

「オレ、お前のこと、嫌いじゃねえよ」

ウィルフレッドが不思議そうな顔をする。それを真っ直ぐに見返して、ナツは拳を握った。






妖精の尻尾のキャラはみんな後腐れないですね…。


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