「あれ?」
「星の大河は鞭だけど微粒子だからね!その戦法は通じないわよ!」
「なんか知らんが死なずに済んだ」
「はあ?」

心の底から安堵して、ナツはふう、と冷や汗を拭った。そこに、眩しい光を拳に、ロキが突進してくる。

「うぐ!?」

頬に一発食らった。しかし浅い。
ナツは片手をリングについて、身体を空中に浮かせて勢いを殺した。たんたん、と二度跳ねる。
着地する瞬間を狙って、今度は鞭が襲った。

「うぉ!?」

確かにその一瞬は無防備になるしかない。腹を横一文字に打たれたナツは、ルーシィとロキに向かって吠えた。

「二対一って卑怯だろ!」
「星霊魔導士に何を言ってんのよ」

呆れたように言って、ルーシィはロキと目配せした。彼女を庇うように、さっと彼が前に出る。
大した指示もなく連携が取れている。目だけで会話出来るとでも言うのか。

なんだか無性に気に食わない。

頬がひくりと引き攣った。思い切り暴れまわりたい――。

「あ。そっか」

ナツはぽむ、と両手を打った。
ルーシィを傷付けずに勝つ方法がある。しかも、ナツの得意分野で。
にやりと笑ったナツに、ルーシィがギクリとしたように肩を跳ねさせた。

「ちょ、ちょっと、ナツ?」
「んん?」
「なんかすっごいイヤな予感するんだけど」
「オレはしねえ、よ!」

ごぉっ、と全身から炎を揺らめかせる。気合を入れて、ナツは、

「ナツ!こら、それはダメ…!」
「うぉおおおお!」

どご、と。

リングに拳を叩き付けた。

「きゃあああ!?」

リングマットはあっけなく裂けた。不安定な足場にルーシィが膝を付く。
一撃は土台すら突き抜けて、地面にまで刺さった。ナツは傾いたポールを足場にして跳躍しつつ、更にリングを破壊する。

「火竜の鉄拳!鉤爪!翼撃!」
「ルーシィ!」

全てに火が燃え移る一歩手前で、ロキがルーシィを抱えて逃げた。炎に照らされるハッピーの横に彼女を下ろすと、ふ、と渦になって消える。
ナツは燃え盛るリングの上で、座り込んだルーシィにぴ、と人差し指を向けた。

「よっしゃあ、場外だ!」
「何をやってるんですか!」
「あ」

バケツを持って走ってくる数人と、実行委員長。気付けば、周りは阿鼻叫喚の大混乱となっていた。
ルーシィが勢い良く立ち上がる。

「申し訳ありません!」
「話は後です!」

特設リングは観客席から離れていたため、怪我人が出ることはない。燃え移りそうな物もないため放っておいても燃え尽きるだろうが、彼らはそれを良しとはしないようだ。懸命にバケツを振り回している。
ナツは切羽詰った状況ではないことを確認して、ルーシィとハッピーの前に下りた。

「どうすんのよ、火の海じゃないの」
「報酬貰えないだろうし、ルーシィは火の車だね」
「上手いこと言うなぁ、ハッピー」
「上手くない!さっさと消火しなさいよ!」
「オレ、自分の炎は食えねえもん」
「あ、そうだった……」

ルーシィは身を翻して、消火活動をする人達に向かって走って行く。
バケツの水に鍵を刺す無傷の彼女を見ながら、ナツは闘いが終わったことに心底ほっとして、肩から力を抜いた。






もう絶対、ルーシィとは闘わない。
お付き合いありがとうございます!


おまけへ 戻る
main
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -