「誰でも良いからかかってこぉおい!!」
やかましさに輪をかけて、ナツが叫ぶ。グレイは苛立ちゲージを瞬時に溜めて、ばっ、と上着を脱ぎ去った。
「んだよ、ナツ、てめえ、」
「赤くなんかなってねえよ!?」
「はあ?誰もんなこた言ってねえよ!」
ぎっ、と睨みつけてくるその顔は、確かに紅潮している。丁寧に自分の墓穴を掘ったナツに、グレイが原因を考え始めるよりも早く、太い腕が彼の目の前を横切った。
「漢ぉおおお!」
「よっし、まずはお前からだな、エルフマン!」
「抜け駆けすんな!」
身体はすでに勝負を待ち望んでいた。グレイは手近なテーブルを引っ掴んで、気合一発、二人目掛けて投げ込む。
「ふん!」
エルフマンがそれを真っ二つに割る。しかしそのがら空きの懐に、ナツが拳を構えて滑り込むのが見えた。
「もらっ…!?」
がしゃん!
何もないところで、ナツは前のめりに転倒した。桜色の頭は床に刺さっていて、すぐに起き上がるような気配もない。グレイはきょとんとして、爪先でナツの足を小突いた。
「おい、死んだか?」
床下からくぐもった声が聞こえる。
「……はい」
「は?死んだのか?」
埋まったナツの耳は、異常なほど赤かった。