「火竜のナツ!」
無駄によく通る大声で呼びかけられ、ナツが面倒くさげに目を向けた。恐らく次の言葉が予想できているからだろう。
「ロマンスは!?」
「またそれかよ。ねえっつーの」
週刊ソーサラーの記者、ジェイソンは、リオンがジュビアを巡ってグレイと争っていることを――誤解もいいところだったが――知って、恋愛事情の取材に力を入れ始めた。スクープを狙おうと、頻繁にギルドに現れる。
「いい加減にしろよ、面倒くせえな」
「その態度もクール!」
グレイはジェイソンの後ろでもじもじしながら様子を窺っているルーシィを目に入れて、にやりと口角を上げた。
「あんじゃねえか、ナツ」
「は?」
「だ、大スクープ!お相手は!?」
「おい、何言ってんだ、変態野郎」
ぴき、とこめかみに青筋が浮かぶも、グレイはひょい、と指を上げた。
「ルーシィ」
「は……はい!?」
「おおおお!クールクールクール!チーム内の恋愛クール!!」
「な、何言ってんのよ!?」
「いいじゃねえか、目立ちたいんだろ」
「だっ、こういうのじゃない!」
真っ赤になって喚くルーシィを両手で制しながら、グレイはちらりとナツを見た。ジェイソンがメモ帳を構えて詰め寄っている。
「いつから!?」
「いあ、え……な、何が?」
「いつから好きだったのか!いつからお付き合いしているのか!告白はどっちから!?」
「いつ……」
ナツは脳の許容量がオーバーしたのか目を白黒させて、助けを求めるようにルーシィを見た。
「い、いつから?」
「知るか!てか、そうじゃないでしょ!」
「わかった、先にルーシィから取材させて!」
取材、と聞いてルーシィの目の色が変わった。しかしぶんぶん、と頭を振って否定する。
「あのっ、あたし達そういうんじゃっ」
「まず写真撮らせて!」
「へ?いや、その」
「寄って寄って!もっと寄って!」
「違うってば!」
「ナツ、ルーシィの肩を抱いて!そう!」
「すんな!」
きぃ、と歯を剥くルーシィを、半ば呆然と抱き寄せるナツ。グレイは面白いことになった、と笑いを堪えるのに懸命だった。