「そっちだったのね」
「ったく、余計なことばっかしやがって」
「出会った頃より小さいね」
「んんー、そうかもなあ」

ナツはハッピーの頭を小さな手のひらで撫でた。いつもと違う、と驚いたように言いながらこねくり回す。
ルーシィは地面に引きずられたマフラーをナツの首に巻き直してやった。もう一度バルゴを呼び出し、子供服を受け取る。

「あんたも着替えなさい」
「おう」

良い返事をして、ナツは手を上げた。何かを期待するような目でルーシィを見上げてくる。

「…なによ?」
「手伝ってくんねえの?」
「一人で着ろ!」
「えー、これボタン多いじゃねえか」
「姫、ここは私が」
「へ、ちょっ、お、おわっ」
「ナツ、がんばれー」
「何を、ちょ、まっ、待て待て待て、それは脱がすな!」

バルゴにナツを任せて、ルーシィはグレイを振り向いた。

「どうする?村に戻る?」
「いや…一刻も早く安心したいっつってたしな」
「そうねえ…」

その獣型モンスターは最近になって急に現れたという。
ルーシィは村長の青ざめた顔を思い出して、拳を握った。
このまま続行する。
覚悟を新たにしたとき、小さなナツが彼女の横を走り抜けた。

「ちょ、ナツ?どこ行くの」
「もうイヤだ!なんとかしてくれよ、ルーシィ!」

叫んだかと思うと、彼女の足に隠れるようにまとわりつく。
後ろを見れば、バルゴがピンク色のワンピースを持って小首を傾げていた。

「まだ三着目です」
「そうだよ、ナツ。まだまだあるんだから」
「なんで着せ替えられなきゃなんねえんだよ!」
「折角だから色々着てみようよ」
「こちらの方が可愛らしいのではないかと」
「そりゃ女物だろーが!」
「気のせいでしょう」
「あい、勘違いだね」
「んなひらひらしたの着れるかっ!」
「大丈夫です。私にお任せください」
「着方がわかんねーんじゃねえ!」
「バルゴ」

ルーシィは緊張感の無い三人に向かって、腰に手を当てた。

「遊んでないで。ナツもちゃっちゃと着ちゃいなさい」
「だから着ねえよ!」
「きっとあれも似合うわよ」
「お前も遊ぶんじゃねえって」

こつ、とグレイがルーシィの頭を叩く。足に絡みついたナツがにやりと笑った。

「やーい、怒られたー」
「まあ可愛らしいわね」
「ぐぎぎぎ!」

ルーシィはナツの頬をつねりながら、バルゴに手を振った。

「ありがと、もう帰っていいわよ」
「ナツ様にはお仕置きして、私にはないのですか」
「…また今度ね」

きゅるん、と霧散する魔力の渦を見送って、ルーシィはナツを振り返った。頭のてっぺんから足の先まで、じっくりと目を走らせる。

「…なんだよ?」
「うん、似合ってる。可愛いよ」
「可愛い言うな!」

全体を濃い赤でまとめたコーディネートは、出会った頃を思い出させてくれた。
ルーシィは変わらず跳ねている髪に手を伸ばした。しかしそれを振り払って、ナツはしかめっ面をする。

「頭撫でるとか、有り得ねえんだけど」
「うわー、この生意気なとこも、小っちゃいナツって感じ」
「そのまんまだろうが」

グレイが呆れたように言う後ろに、ジュビアが戻ってきた。星型のポケットが付いたスカートを履いている。

「おまたせしました」
「ジュビアも可愛いわね」
「よし、行くぞ」
「あい!」
「おっしゃー!」

だかだかと大股で足を踏み出すナツと、大人しいジュビア。
グレイの背中を追いかける二人を見ながら、ルーシィは小さく笑いを漏らした。






御召し替えならバルゴ。


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