「何してんだ?エプロンなんかして」
振り向くと、グレイがルーシィの格好を見て首を傾げていた。
彼女が返事をするより早く、ナツが指摘する。
「お前はなんか着ろよ」
「おわっ!?いつからだ!?」
「知らないよ」
「あ、グレイ、これ」
「いや、それはしねえって」
ルーシィの差し出したエプロンを押しとどめて、グレイがカウンターの上を見やる。
半分ほど消えたオムライスを前に、ハッピーが答えた。
「ルーシィに作ってもらったんだー」
グレイはシャツの袖に腕を通した格好で、あんぐりと口を開けた。
「…マジだったのか」
「え?」
ナツがオムライスを頬張ったまま、にやりと笑う。
「ほは、ひったほーひらろ!」
「多分、言った通りだろ、と言ってます」
「なんのことよ?」
「ルーシィがナツに飯作ってるって、ナツから聞いてはいたんだけどよ。正直信じてなかった」
「なんでよ」
グレイもまた、ルーシィに料理なんて、と思っていたのか。
返答次第ではただじゃおかない、と半眼を向けたが、彼は頬を掻いた。
「いや、手料理を食べさせるような関係になってるとは思わなかったんだよ」
「ちっ、違っ…!て、ハッピーだっているし!」
ナツへの気持ちに気付いてしまった今となっては、こういうからかわれ方には耐えられそうにない。
少なくとも昨日まではそんなんじゃなかった、と思ってしまい、ルーシィは火照った頬を手で扇いだ。
否定を裏付けるように、提案する。
「グレイにも作ってあげようか?」
「いや、いいわ。お前もんなこと言わねぇ方が良いぞ」
「え?」
「ヤキモチ焼く奴、居るからな」
途端、ぼほ、とナツが咳き込んだ。
「べ、別にオレはそんなんっ!」
「お前とは言ってねえけど」
「てっ、てめぇ、表出ろ!」
「おお?この場から逃げたいってことか?」
「ヘンタイ!裸族!グレイ!」
「てめえ、オレの名前を貶し言葉みたいに言うんじゃねえ!」
あっと言う間に二人は取っ組み合いながら外へ転がっていった。
残されたのは、しっかりと空になった皿と、白いシャツ――
「ルーシィ?」
「…こっち見ないで、ハッピー」
それと、真っ赤になった、ルーシィだった。