それを見た途端、言い様のない感情に襲われた。
「なにこれ!?」
週間ソーサラーでの魔導士ランキング。
『彼氏・彼女にしたい魔導士』やら『上司にしたい魔導士』など、ルーシィは妖精の尻尾に入る前から、密かにこれにランクインすることを夢見ていた。
だがそれは、もうどうでも良いことだった。もし自分が入らなくても、妖精の尻尾には有名な魔導士がたくさん居る。知り合いが載ることが楽しく、また嬉しい。
しかし、今。
彼女は広げた週間ソーサラーのあるページを見て、愕然としていた。
「ウソでしょ…」
読むだけで顔が赤くなってしまうような見出し――抱きたい女魔導士ランキング――に。
「何してんだ?」
「きゃあああ!?」
突然自分の顔の横に現れた桜色の髪に、ルーシィは飛び跳ねた。親指を挟んだまま、ばしん、と雑誌を閉じる。
「な、ナツ…どうしてここに」
「うん?どうしてって、ここギルドだぞ?オレが居たら悪いのかよ」
「い、いや、悪くないけど」
「なんだ?どうかしたのか?」
ナツは訝しげにルーシィの手元に目をやった。慌てて雑誌を後ろ手に隠す。
「なんでもないの!ナツはあっち行ってて!」
「何隠してんだよ?」
「いーいーかーらー!」
「なんか気になるな。教えろ」
「しっしっ!」
「オレは犬かっ!」
しつこく食い下がるナツから一歩後退る。ぎゅ、と雑誌を握り締めたとき、元気な声が聞こえた。
「おはようございます!」
振り向くと、ギルドの入り口にウェンディとシャルルの姿が見える。
彼女達はルーシィ達を見つけて、にこりと微笑んだ。
「あ、おはようございます。ナツさん、ルーシィさん」
「おう、おはよ」
「お、おはよ…」
ルーシィはささっ、とナツに背中を向けると、手探りで雑誌のページを破り取った。くしゃりと丸めて、ナツに手渡す。
「ん?なんだ?」
「燃やして!」
「は?」
「良いから!」
ナツはルーシィからそれを受け取ると、何の気なしに開いてみた。
大きくピンクのハートマークまで付いた、『抱きたい女魔導士』の文字。
いつもなら馬鹿らしいな、と流し読みする程度のその記事。羅列された名前の中、七位に、目を引き付けられた。
――『ルーシィ・ハートフィリア(妖精の尻尾)』
小さくともご丁寧に写真まで載っている。
「……」
ナツは無言で手に炎を点した。紙一枚には有り余る魔力を使って、それを灰にする。
ルーシィはウェンディと一言二言話して、彼女達が酒場の奥に向かうまで見守っていた。そしてほっとしたように胸を撫で下ろし、ようやくナツを振り向く。
「ありがと、ナツ……ナツ?」
「んだよ」
自分は今ずいぶんと凶悪な顔をしている気がする。しかし表情を改めるつもりもなく、ナツは声を絞り出した。