もどかしげに扉を蹴破ると、そこにはルーシィが居た。部屋の中央で脱力するような姿勢で、わずかに浮かんでいる。
間に合った。
「ルーシィ!」
確かに、視線が合った。ナツは全力で走り寄りながら、腕を伸ばす。
ルーシィは彼が来るなどと思ってもいなかったのだろう、驚いたように目を見開いた。そして――、
――消えた。
「――……ルーシィ?」
しぃん、と静寂が耳に痛い。
ナツは呆然と、彼女が今までいたはずの場所へと進んだ。
痕跡さえ見当たらない。幻だったのかと思うほどに。
「ナツー!ルーシィー!」
後を追ってきた仲間達の声に、びくり、と肩が震える。
「え?」
肩だけじゃなく、全身が震えていた。
「なんだ、これ……」
意味がわからない。わかりたくない。
――『それが発動したら、生贄となった者は消えてなくなる』
そんな、まさか。だって。違う。ルーシィは。
「ナツ!」
「うぁ…」
この五日間、ずっと張り詰めていた糸が、ぷつりと切れて。
ナツはもう、保てなくなった。
「うぁああああああああ…!」
取り押さえようとする何者かの手を、腕を。全身全霊で拒絶する。
ナツの脳裏で、ルーシィの笑顔が薄れて、消えた。