「…帰ったんじゃなかったの」
「だから、帰ってきただろ、ここに」
あっけらかんと言って、ナツはまた元のようにソファに身を沈めた。
その傍には相棒の青い猫が、鼻唄を歌いながらテーブルに落書きしていて。あたしは持っていた本の背表紙を小さい頭にめり込ませて、はぁ、と溜め息を吐いた。
あたしよりも早く、「帰る」と言ってギルドを出て行ったくせに。
「あんたらの『帰る』は信用できないわ」
「オイラはちゃんと家に帰ろうとしたんだよ。でもナツが」
「オレが居なかったらルーシィが帰れなくて困るだろ?」
「はい?」
「お前の帰るとこは、ここだし?」
そう言って自分の胸を叩いてにか、と笑う桜色。
満足に反応もできないのは、決してあたしの頭が悪いからじゃない。よね。
「おかえり」
「おかー」
「…ただいま」
結局、それだけ言うのが精一杯。