しかしすぐに鼻を鳴らすと、両手を構えて魔法を発動する。

「よっ、と」
「おおっ」
「あら…綺麗ね」

ナツの横に、精巧な氷のルーシィが出現した。
頬杖を突き、夢見るように薄く微笑んで、目を閉じている。表情はナツの頭の中の彼女よりもずっと女らしかったが、紛れもなくルーシィだった。
グレイが氷像の出来に満足して頷いた。

「ほら、このくらいだろ」
「おお、そうそう…て、何かこのルーシィ、違わねぇか?」
「え?どこが違うの?」

ナツの違和感に、グレイもミラジェーンも首を傾げた。
どこが、と言われるとはっきりとはわからない。ナツは眉間にシワを寄せて唸った。

「んんー…」
「何だよ?オレの知らない間にルーシィ育ってたのか?」
「むしろナツが育てたんだ、とか?」
「…ミラちゃん、発言が際どいよ」
「なにやってんのー?」

場に割り込むように、明るいハッピーの声が投げられた。氷像を見て驚愕の表情を浮かべる。

「る、ルーシィが氷になっちゃった…!」
「なるわけないでしょ!?」

ツッコミと共に、青猫の頭にチョップが落ちる。
状況を飲み込めない、と顔に書いた、ルーシィだった。

「何やってんのよ?なんであたし?」

彼女の視線は氷とグレイを往復していた。
それは当たり前だろう、氷でこんなことをする犯人は一人しかいない。
ナツはその様子をちらり、と見てから、改めて氷像の細部に目を凝らし――現れた本物と見比べた。

(手、腕、足…一緒だな。乳…も同じだ…てかグレイの奴、いつもどこ見てんだよ)

目が据わったナツを置き去りに、厳しい視線に耐えかねたグレイがルーシィにもろもろと説明を始めた。

「あー、こ、これは…その、ルーシィはこうだろ、と」
「なんでいきなり?」
「ルーシィの胸の大きさで議論になったのよ」
「は…はいぃ!?」
「み、ミラちゃん!それは言わないようにしようと…!」
「ルーシィのなら、オイラが一番よく知ってるよ!」
「黙んなさい、猫!ちょ、ちょっと、人を使ってなんてことしてんのよ!?」
「え…あ、その。ナツの野郎が」
「ナツ!?…て、ちょ、何やってんの!?」
「んあ?」

ナツは氷像を確かめるように、腰に手を這わせていた。突然上がった非難の声に片眉を上げるも、手は止めずになだらかな曲線をなぞり、スツールまで到達させる。

「触ってる」
「それは見ればわかるわよ!ちょ、やめて!なんか嫌!てかこんなの作らないでよ、グレイのバカ!」
「ほら、オマエの触り方がエロいから怒られたじゃねぇか」
「グレイが触るよかマシだろ」
「そうよ、ルーシィ」
「ミラちゃん、オレなんかした…?」
「どっちも嫌ー!」
「オイラが触るー…と言いたいところだけど冷たそうだから止めます」
「根性無し!…と思ったけどそれでいいわ…」

表面だけ冷えて濡れた手をぴ、と払って、ナツはスツールを下りた。違和感の正体が、見えた気がする。
床に視線を投げて嘆く本物のルーシィに手を伸ばして。

「、っきゃあああ!?」
「うん…やっぱそうだ」

グレイもミラジェーンもハッピーも。
唖然としてナツの右手を目で追っていた。
ナツは全く意に介さず、それ――ルーシィの尻――の形を確かめるように撫で擦る。
悲鳴を上げつつびくり、と背筋が伸びたルーシィに、にかっ、と笑って。

「本物の方がケツでけぇ」

氷よりも冷たくなったルーシィの瞳の奥に、ナツは三途の川を見た。






あら不思議!最後の一文だけでどんな内容でもこのタイトルに!
お付き合いありがとうございます!


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