めり込んだナツを掘り出しながら、ハッピーが嘆息した。小さく呟く。

「オイラがルーシィでも幻滅するよ」
「…ぐむぅ」

今日は調子が悪かった。
埋まった顔をなんとか上げて、ナツはぷるぷると頭を振った。口の中にまで土が入っている。ぺぺぺっと吐き出すと、低くなった視界にヒールが割り込んだ。

「全くもう…血の気多いんだから」

仕方ないわね、とでも言いたげな声音が降って来る。無警戒にしゃがんだルーシィは見えそうで見えない角度を維持しつつ、ナツを地面から引っ張り出した。
ハッピーの言ったことは彼女には当てはまらなかったようで、目が合うとくすり、と笑われる。不本意ながらエルザに負けるのはいつものことなので、今更どうということはないのは当たり前だった。
それでも少し安堵して肩を落とすと、ルーシィがぱんぱん、と服に付いた土を払ってくれた。

「ああもう、こんなに汚して」
「さんきゅ、母ちゃん」
「誰がよ!?」

座り込んだまま視線を巡らせると、エルザの姿は見当たらなかった。

「あれ、お前だけ?」
「エルザはグレイを探しに行ったわよ。立てる?」
「おう」

差し伸べられた手を掴んで、ナツはぴたり、と動きを止めた。

「ナツ?」
「やっぱ立てねぇ」
「はぁ?」
「ルーシィ、おんぶ」
「甘えんな!」

ほんの少しだけ腰に違和感があったのは間違いない。立って歩くことに支障があるほどではなかったが。
ナツが両手を差し出して「ん」と促すと、ルーシィは片眉を上げて溜め息を吐いた。

「ったく…」

背中を向けて目の前にしゃがんでくれる。その優しさ――甘さかもしれない――に口角が上がるのを止められない。例えハッピーが痒い視線を送ってきていても。
遠慮なく華奢な首に抱きつくと、ルーシィはナツの足をかかえて立ち上がった。
途端、彼の腕から力が抜ける。

「うっぷ…やめときゃ良かった…」
「あんた、いい加減にあたしを乗り物扱いすんのやめなさいよ!」

喚き声が意識から遠ざかる。
ぐらぐらと脳を揺らしながら、ナツは吐き気を堪えることに精一杯だった。天地が引っくり返ったように、何もわからなくなる。

ルーシィのくすくす笑いの意味も。
ハッピーが呟いた「ルーシィはこんなナツでも惚れるんだね」というセリフも。


それに対する、彼女の反応も。






あまえっこ。


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