がたんごとんがたんごとん。
仕事先へと移動中、最強チームはマグノリアの駅から汽車に乗っていた。一定間隔の音と振動が、線路の上を走る車体に伝わっている。
今回は依頼主からすでに個室の乗車券が用意されていた為、4人と1匹は喜んで乗り込んだ。いや、喜んだのは3人と1匹だったが。
ウェンディがいるわけでもない。乗り込む前は無駄な元気を発揮していたナツがいつも通り乗り物酔いでグロッキーに陥り。それをいつも通りエルザが鉄拳で本人曰く楽にしてやり、気を失った後のナツには覚えの無い膝枕で介抱してやっていた。
「しかし運が良かったよな」
「そうね、こんな広い個室、無料だなんて」
ルーシィは無料、に力を込める。タダって素晴らしい。キラキラとしたルーシィの瞳に隣に座ったグレイは口元を引きつらせた。
乗車券は手違いでダブルブッキングされており、急遽6人用の個室が宛てがわれたのだ。ルーシィは濃い灰色の座席を撫でる。肘置きのないソファタイプのそれは、のされたナツが横になってもまだスペースがあるほど大きい。ハッピーは心地よい揺れにナツの脇でくー、と寝息を立て始めていた。
平和な風景にルーシィは目を細める。
ガガガッ!
汽車が鉄橋に差し掛かった際、天井のスピーカーからノイズが流れた。
「何?」
不快なノイズ音に動ける3人は音の出どころを見上げる。
ガ、ガガッ!ピー…
一瞬後、焦ったような声の放送が始まった。
『乗客の皆様にお伝え致します。この汽車は只今ジャックされております。皆様には危害が及びませんのでどうぞ席からお立ちにならないようお願い致します。繰り返します…』
「なんだと?」
エルザが立ち上がった際ナツを床に落とす。豪快にごととん、と音がした。
「ちょっ、ちょっとエルザ…」
「なんだ?」
一度戦闘モードに入ったエルザに鋭い視線を投げられて、ルーシィは喉の奥でひっ、と声を詰まらせた。グレイは知らない振りでスピーカーを見ている。仕方がないのでルーシィはナツを拾って身体の下に足を入れ、てこの原理で再び座席に戻す。一緒に転げたハッピーを空いたスペースに置いた。
ナツは力が抜けているが気絶しているようには見えない。さっきエルザに落とされたときに目が覚めたんだろうか。
「行くぞ」
エルザは何の躊躇も無しに扉に足を向ける。グレイに続こうとして、ルーシィは後ろを振り返った。
「ナツどうしようか?」
「あー…頼むな、ルーシィ」
「はい?なんであたしっ!?」
「ナツはルーシィの担当だろ」
いつの間にそんなことに、と文句を言いかけたがすでに背中は扉をくぐっていた。ルーシィは苦しそうなナツと、寝ているハッピーだけのコンパートメントで溜息を吐く。グレイが座っていた座席にはシャツが残されていた。