「んー?そうかー?」

ルーシィとハッピーは不可解なものでも見るようにそれを眺める。

「まぁな…って、なんで知ってんだよ!?」
「いあ…べ、別に否定してるつもりはねぇけど」
「うぉ、やめろよー」

ナツがさっきから頬を染めつつ相手をしているのは。

「プーン!」

子犬座ニコラの星霊、プルーだった。





子犬のプルー








「会話…してるのよね?」
「してるんだと思うよ…」

ハッピーはもちろん、所有者たるルーシィにすらその言葉は理解できないのに。
耳の性能なのか、はたまたどこか通じるものがあるのか。ナツにはプルーの言っていることがわかるようだ。
それにしても。

「何…話してんのかしらね?」
「さぁ…」

ナツが赤面することは珍しい。よほど嬉しいときや興奮したときには見られるが、こんな日常会話で目にすることは少ないはずだ。ルーシィはナツには恥の概念が無いものだと思っている。

「う、そんなこと言われてもよ…オレは今のままで満足っつーか」
「プーン!」
「嘘じゃねぇよ!そりゃそういうのは困るけどよ」
「プーン」
「もっとって…どうすりゃいいもんなんだ?」
「……」

話だけだと恋話のように聞こえるが、そんなはずはない。ナツに限って、恋だなんて。しかもそれをプルーと話す、だなんて。両方有り得るはずのないことだ。
ルーシィはテーブルに肘をついた姿勢で頭を抱える。状況が不可解すぎて考え疲れてきた。

「ルーシィ、大丈夫?」

腕の間に猫が滑り込んでルーシィを見上げた。声は心配そうではあるが表情はそうでもない。どうでもいいことに頭を使うな、ということか。
ルーシィは軽く溜息を吐いて顔を上げた。

「あんた達、そのくらいにしなさいよ」

そう。ギルドに着いてもう2時間、この調子で二人は話し込んでいた。プルーはすでにナツの手から5つ目のペロペロキャンディを受け取っている。いい加減にしろ。収賄容疑で捕まえるぞ。

「ルーシィ、ナツに構ってもらえなくても拗ねないでよ」
「何か言ったのはこの口かしらぁ、猫ちゃん?」

ハッピーの頬を挟んでぎゅぅ、と押す。むぎゅぅ、と可愛らしい鳴き声がしたがそこは問題ではない。

「べ、別に拗ねてるわけじゃないんだからねっ」
「ツンデレのテンプレみたいだよ、ルーシィ」

更に力を込めてやるとぐご、と鳴いた。可愛くない。
あたしも可愛くないんだろうか。ふと、そんな風に自信が揺らぐ。
昨日夜遅くに新品のネイルに染めて、合わせて購入したリボンもしてきた。鏡の前では自信あった、のに。なんで今日に限ってプルーに負ける?
口を尖らせてハッピーをテーブルに下ろすと、ナツとプルーが同時にこちらを向いた。

「プーン」
「なぁ、ルーシィ」

2時間ぶりに、その視線が交わった。ルーシィはそのことに気付いてどきりと胸を高鳴らせる。ナツの視線はいつでも真っ直ぐで、ルーシィはその度に焼け付くように目を離すことができないでいる。そう、いつでも。
ナツはその瞳でルーシィを釘付けにしたまま何も知らずに言葉を紡ぐ。

「ロキ、呼び出してくれよ」
「…は?」
「いや、ちょっとロキと話したいっていうか」

マフラーを巻いた首元を掻いてそわそわと落ち着きないナツに、さっきまで頬を染めていた横顔がかぶる。まさか、まさかまさか。
目の前が真っ暗、いや真っ白になってくらり、目眩がした。

「そ…んな…」
「ん?どうした?」
「ろ、ロキは…男で星霊なのよ、わかってんの!?」
「ああ、当たり前じゃねぇか」

だからお前に頼んでんだろ、ときょとんと首を傾げるナツに、ルーシィは抑えられず涙目になる。本気だ。

「う、うあぁああああんっ!!」
「ルーシィ、」

ハッピーが何か言いかけたがルーシィが椅子を蹴って走り出す方が早かった。ギルドの外へ。ナツのいない所へ。

「なんだ?どうした?」

ナツは呆然と土煙を見送ってハッピーは溜息を吐いた。
プルーはぷるぷる震えてナツを慰めるようにその足に手を置いた。






2010.9.6〜2010.9.8拍手お礼
もちろんロキの意見を聞きたかっただけですよ?
タイトルは石川ひとみさんの歌ですね。絶対使いたいと思ってました。
carpioは童謡しばりみたいな感じでやってますが、みんなのうたはセーフだというマイルールです。



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