「ふぶっ!?」
すっかり寝入っていた夜中。
ルーシィは突然腹の上に出現した重みに目を覚ました。
「な…」
「ルーシィ、ナツ知らない?」
「ハッピー…?あんた…」
段々と鮮明になってくる頭に、布団の上で仁王立ちする青い子猫の姿が認識される。
「知らないわよ」
なぜこんな時間に、とかなぜ人を踏んで起こした、とか言いたいことはいっぱいあったが、全てを飲み込んで首根っこを掴む。もう遅い時間だ、騒ぎ立てれば近所迷惑となる。
「あ、いた」
ハッピーが小さい手をいっぱいに伸ばして指す。ルーシィのベッド、ルーシィの隣。布団からはみ出た、ピンク。
「……」
この時点で予想はついた。わかった。
半眼で布団をめくる。
すやすやと寝息を立てながら寝ている奴を永眠させてやろうか、と子猫を持った手に力を入れる。
「痛いよ、ルーシィ」
「うるさい猫。早く連れて帰りなさいよ」
顔の上で子猫を開放する。と、狙い違わずナツの顔面に落ちてバウンドした。
残念ながら起きる気配はない。
どころか、ナツの手が子猫を掴んで胸元に引き寄せた。
「ルーシィ…」
「オイラハッピーだよ」
ハッピーが抱きしめられたまま若干苦しそうに言う。
「ルーシィ、顔赤いよ」
「あ、赤くないわよ…」
間違いなくナツはルーシィの名を呼んだ。
夢の中で、抱きしめて。
思わず手の甲で口元を隠し、
「…あれ?」
自分の格好に気付いた。部屋着では、ない。
ルーシィは家に帰ってきた服装のままだった。
「あ…」
そういえば、買ったばかりの本を読んでいたんだった。途中で寝てしまったような、気がする。
月灯りに浮かんだソファには閉じた本が転がっていた。
「ナツ…?」
寝ている間にやってきたナツが、ルーシィをベッドに運んだに違いなかった。
そのまま自分も横になるとは何事だとは思うが、それは頭の中だけで。心の中は嬉しくて。
「…ありがと」
寝言の件もあったためか、珍しく感情が理性に勝った。けれども小さく小さく呟く。
ハッピーが不思議そうにルーシィを見上げた。
と、ナツがハッピーを抱き込んだまま苦しげに呻く。
「ルーシィ、これは駄目だ…食うんじゃねぇよ…」
「ルーシィ、オイラを食べちゃうの!?」
「誰がそんな食い意地張ってるのよ!?」
さっき名前を呼んだのもそれか、と思ったら我慢しきれず。
結局騒音覚悟でベッドから叩き落した。