「ナツ!ルーシィ!無事か!?」
瓦礫を蹴ってエルザとグレイが顔を出す。
「ルーシィ!」
ハッピーが胸に飛び込んできた。
結局壁が崩れてくるまで動けなかったルーシィを、ナツが無理やり引っ張って避難させたのだった。
「エルザ!グレイ!」
「おう、怪我はないか?」
「う、うん。大丈夫。あ、ナツ…」
振り返るとナツは倒れた柱の横で立ち上がるところだった。
「どうした?柱でも当たったか?」
「いや、柱じゃなくて棒が…」
「きゃあぁ、ばかー!!」
思わず手近な瓦礫をナツに投げつける。エルザとグレイはきょとんとしながらもやり取りを見守ってくれた。
「あ、仕事は?」
「終わったよ」
「ちぇ、やっぱりか」
エルザとグレイはモンスターを全滅させてから、この部屋への入り口を探ったのだが見つからず、結局壊すしかなかったらしい。
「すまん、また報酬が減るな…」
苦虫を噛み潰したようなエルザの表情に、笑って答える。
「仕方ないよ、中からでも出る方法わからなかったし。魔法も使えなかったから助かったよ。ありがとう」
そうだ、外に出られなかった。まさかとは思うが、行為を終えなければ出られなかったのかもしれない。
もし――もし、あの時スイッチが切られなかったら――。
ルーシィは顔を赤くして考えを振り払うように頭を振った。
「へ、魔法が使えなきゃとんだ役立たずだなぁ、ナツさんよぉ」
「あぁ?てめぇは魔法がなけりゃただの変態じゃねぇか」
「やめないか、お前たち!」
「あい」
いつも通りの展開に苦笑しつつ、胸に抱いたハッピーを撫でる。
「悲しいくらいいつも通りね」
「あい?何かあったの、ルーシィ?」
「え、あ、ううん。何も」
「帰るぞ。依頼主に任務完了の報告をしなければな」
「うん」
エルザとグレイの後ろを歩きだす。
と、後ろからぎゅ、と引き寄せられた。犯人は一人しかいない。
「ひゃ!?え、ちょ、ナツ!?」
腹のあたりに巻きついた腕。首元にこすりつけられた頭。
グレイが声に気付いて振り向いた。
ハッピーを抱えたまま、振りほどくことも忘れて固まっていると。
「んー…今度は平気だな」
なんでもないように手を離した。
顔だけじゃなくて頭にも血がのぼるのがはっきりとわかった。
「最っ低!」
ハッピーを顔に投げつけ歩幅を大きくしてエルザを追う。
途中で追い越したグレイがナツにお前が変態じゃねぇか、と言っていたが聞こえないフリをした。