ほたるこい






「ナツー!ほらすごいよー!」
「うぉ、すっげぇ!」
「うわぁ…」

川辺に浮かぶ、黄緑の光達。
点いては消え消えては点く。
月明かりよりも眩しいそれらに、口を開けたまま見入る二人と一匹。
三日前、次の仕事先の名物が蛍だと知って、絶対に見に行こうと約束していた。
イベントを楽しみにし過ぎるきらいのあるルーシィも、今回は体調万全で参加することができて。

「ほ、ほ、ほーたる来い♪」

ナツが岩に腰掛けて足を投げ出す。
夜だというのに落ちないテンションに、ルーシィはくすりと笑った。

「あ、知ってるよ!童謡だよね!」
「甘いっていうのは軟水のことだって説があるらしいわね」
「なんだそれ?」
「水の硬度のことよ。ミネラルが少ないのね」
「またルーシィわけわかんねぇこと言ってんな」
「あんたが聞いてきたんでしょ!」

軽く脳天にチョップを入れる。

「ルーシィ最近暴力的だよなぁ」
「前からだよ」
「あんたもやって欲しいのね、猫ちゃん?」
「ほーたる来い…」
「ごまかすな!」

ハッピーは歌いながら川の方へ飛んでいく。
腰に手をやって頬を膨らませると、ナツが岩の上から声をかけてきた。

「ルーシィ、手出せ」
「?」

言われた通り手を差し出すと、ナツは組んだ両手をその上で広げた。
そこには、一つの柔らかな光。

「綺麗…」
「ん…」

二人、覗き込んで前髪が触れる。
声音は柔らかく、落ち着いていた。
ナツが大人しいのに違和感を覚え、視線をあげると。

目が合った。

月と蛍とで明るいとは言え、夜の川辺は暗い。
ルーシィは頬の赤さが闇に溶けていることに安心していた。
その安堵感はいつもの意地っ張りな面を洗い流し、ただただ真っ直ぐにナツへと向かって視線を流させる。

こんな風に、ナツと黙って見つめ合うなんて。

近いとか恥ずかしいとか、普段感じていたものは一体何だったんだろう。
手の上で明滅する光がまるで夢の中にいるようで。
見つめ合ったまま、ナツが切り出す。

「期待、していいか?」

それは、まさにルーシィが考えていたことだった。

「…うん」

言えた。ちゃんと、素直に。
結局自分はずっと言いたかったんだと気付いた途端、眦から涙が一筋零れ落ちた。
光が雫に吸い寄せられるように近付いて、ルーシィの頬を照らしだす。

「ナンスイなんじゃね?」

ナツが照れたように笑った。






ちこさまの「月と甘い涙(閉鎖)」相互記念にこっそり書かせていただきました!
題名とちゃんと合ったもの書いたの初めてですね!
もちろんサイト名をイメージしたんですけど…
これじゃあ「蛍と甘い涙」じゃん!
だめじゃん!たにしのばか!ばかばかばか!もう知らないんだから!

ちこさまのみお持ち帰りできまする。
相互ありがとうございます!



戻る
main
人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -