ルーシィは自分の周囲を見渡した。
床には乱雑に積まれた沢山の本の山。
机の上には執筆中の小説とお菓子。
壁には嵌め殺しの窓があり、外を見ると4階分ほどの高さがあった。
この部屋を出るとキッチンがあり、バスルームもある。
どこにでもありそうな部屋、けれど普通と違う所が1つある。

外に出ることはできない。



鳴かぬ蛍が身を焦がす



この部屋にいる理由は数日前の事だ。

ルーシィはカウンターで本を読んでいて、ふっと顔をあげるとドリンクが置いてあった。
ミラさんかな……?と何ら疑問を持たずに口にした。
次の瞬間、目の前が真っ暗になり床に倒れた。

目が覚めたとき、ルーシィは既にその部屋にいて、机の上にはミラさんからの書き置きがあった。

その書き置きによればルーシィが飲んだのはウイルスに対する抵抗力をゼロにする魔法薬だった。
今いる部屋は魔法で作られた無菌室らしく、薬の効き目が切れるまでの5日間はいなければいけないらしい。

書き置きの最後に危険な目に合わせてごめんなさい、とあった。


1日目は床にある沢山の本を読んだりして楽しかった。
2日目も同じく。

けれど誰とも会話ができない日が続くのは想像以上の苦しさだった。
3日目から、本を読んでも小説を書いても集中できなかった。
1分1秒が長く感じ、壁に掛けられた時計の針の音が耳障りだった。

今日は4日目。
ギルドの喧騒が懐かしい。
ナツは暴れ、グレルが服を脱ぎ、エルザが叱って、ミラは笑う。
4日前までは日常だった日々を思い出すと目からは涙が溢れそうだった。

自分はこんなに弱くなかったと思う。
けれども3日以上も誰とも話せず、自分の体は無抵抗な状態。
傍には頼れる人もいない。
もう限界だった。

みんなに、会いたい………!

「ルーシィ!!」

外から自分を呼ぶ声が聞こえた。

今の声は……ナツ!

部屋にある唯一外を見ることのできる嵌め殺しの窓に駆け寄った。
そこには久しぶりに見たナツがいた。
彼はハッピーに連れて来られて空を飛んでいた。

「ナツ……」
そう言ってルーシィは窓に手をつけた。
ナツもルーシィの手に重ねるように自分の手をつけた。
すると、"ルーシィ"と頭の中で響く声が聞こえた。
耳から聞こえる声ではなく、まるでテレパシーのようだった。

"マスターに魔法かけてもらったんだ。少しの間ならガラス越しでも会話できるぞ。ルーシィ大丈夫か?"
"ありがとう、"

ナツに会えたから、話せたから少し落ち着いた。
でもそれは悔しいから言わない。

ごん、とナツがうつむき加減にガラスに額を当てた。
ルーシィも真似して額を当てた。
2人の距離は近いのに、ガラスが2人の邪魔をして、2人は絶対触れ合えない。

"遠いな。"
"うん。"
"ガラス1枚なのに、な。"
"うん。"
"ルーシィ、俺、"
"うん…。"
"寂しい。ギルドにルーシィいなくて寂しい。"
"…ナ、ツ……!"

ルーシィの目からは涙が溢れ出していた。

"だから、待ってるから、泣くなよ。"

そこまで話したところで、ハッピーがフラフラしてきた。
どうやらハッピーの魔力切れが近いらしい。

"ナツ…!"
"ルーシィ、後1日だ。頑張れよ。"

ニカッと笑って、けれど目からは涙を溢れさせながらナツは去っていった。

笑いながら泣いてんじゃないわよ、と呟いて部屋の中心に戻った。
後、1日と少し。
ナツのおかげで乗り切れそうだ。









Qualia(閉鎖:倉庫化)のぱんださまより相互記念小説を頂きました!


きゃー!が、ガラス越し…!なんてじれ甘シチュ!!しかも皆が居るサイドのナツが寂しくて泣いちゃったよ!可愛いよ!愛してるよ!そしてそこで魔力が切れるのがナイスハッピー!!あまり長くてもダメですよね!ハッピー、わかってる!
会えない時間が愛を育てるって奴ですね…ナツのタイミングとかマジ王子。ルーシィの気持ちとリンクしてるっていうか、もうもう!ああ、こういうのがナツルーですよね…やばい、たにし自分を見直す旅に出ないと…。



素敵な小説をありがとうございます!これからもたにしをよろしくお願いします!!


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