「火竜の鉤爪!!」
どごぉん!
クァアア、と一声。良い具合に気絶して(頭がこんがりしていたが)倒れてくる親鳥を見て、ハッピーが声を上げる。
「次!ルーシィ!卵をそこに置いて!」
「え?」
言われた通りに地面に転がらないように卵を置く。するとハッピーに抱え上げられた。
「え!?ちょっと何する…」
翼はルーシィを木よりも高く上昇させる。
眼下には気絶した怪鳥。まさか。
「親鳥に匂い付けてきて」
無情にもそれだけ言って、ハッピーは手を離した。
「くそ猫ぉぉぉぉおおおっ!!」
ぼすぅん!
幸い羽毛はふかふかで大した衝撃は無かった。しかし。
「く、くさっ…」
受けたダメージは身体的なものだけではない。
想像していたよりもずっと辛い臭気に、ルーシィは鼻どころか頭まで痛くなってきた。
気絶した鳥は衝撃にも起きることなく気を失っている。今しかない。
自棄になって体をこすりつけて。
こみ上げる吐き気と戦いながら巣に戻って卵を置いてきた。
その後ナツとハッピーが珍しくルーシィを気遣い、少し休んでろよ、と言ってくれた。
二人は無事本物の依頼品を見つけて依頼主へ引き渡すと、町の外で休んでいたルーシィの元へ戻ってきた。
「よっし、今回は全額もらえたぞ!」
帰り道、二人と一匹は久々の全額報酬に達成感と充実感で足取りも軽い。
「ルーシィ頑張ったもんな」
ナツは笑う。嬉しそうに。
「やっぱルーシィと仕事行くと楽しいよな」
「な、に言ってんの…」
ナツの天然発言にはどうあっても慣れることができない。
ルーシィは悔しい思いをしながらも頬を染める。
「楽しいから言ってんだよ。ルーシィは楽しくねぇの?」
「た…楽しい、わ、よ」
「でぇきてぇる゛!」
「できてない!」
ハッピーにいつものように否定した、その時。
「ルーシィ」
真剣な目が、ルーシィを貫く。その瞳はどこか潤んでいて熱っぽい。
「ナ、ツ…?」
いつにない良い雰囲気にルーシィの胸は高鳴る。
ナツはルーシィを見つめて、目を細めると、
「悪ぃ、もう無理」
言って鼻を摘まみ、唖然とするルーシィからすすす、と離れた。
「ハッピー、頼む」
「うん。ごめんね、ルーシィ。オイラ達先に帰ってるよ」
言うが早いか、ハッピーとナツは空に舞い上がり。
無駄に早いスピードであっという間に見えなくなった。
瞬きすら忘れて見送る先に一番星がきらりと光る。
「ふざけんなぁぁああああっ!!」
静かな山間にルーシィの叫びがこだました。