「だから、こういうこと」
いくら好きと言っても薄い反応しか返ってこないことに業を煮やして、持っていたノートに棒人間を書き殴る。
まず手を繋がせて。寄り添わせて。ハート型なんて散らしてみて。
始めはきょとんと手元を覗き込むだけだったナツも、紙の上の二体がキスをしたところで、ぼふ、と赤面した。
「ぁ、う、え」
意味のない音を紡ぐだけになったナツの、その存外可愛らしい反応に気を良くして。
一転、
「何赤くなってんのよ。あんただってこういうことしたいって思う子いるんじゃないの」
と前々から不安に思っていた材料でわざとからかった。
きっと今のナツからなら、ちゃんと意味がわかった上での否定の言葉が聞けると思ったから。
でもナツはあたしの思惑なんてわかってなかった。当然と言えば当然だけど。
「お前わかってんじゃねぇか」
などと頬を染めたままニヤリと笑ったかと思えば
「でもお前とロキみたいにソーシソーアイってわけじゃねぇからな。まだまだ時間かかるっつの」
結局、コイツはあたしの話なんて何も聞いちゃいなかったんだ。