「やっぱルーシィが一番だ」
「な、何言ってんのよ…」
無邪気で正直で、裏なんて無い笑顔。ナツはいつもストレートで、相手の反応なんて気にしない。しかもさらけ出した後は言ったこともさっぱりと忘れてしまう。
けれども、その一瞬一瞬に、嘘は無い。
ポッと染まった頬をそのままに、上機嫌でジョッキを呷ったナツを眺める。
視線は交わらない。もう別のことを考えているのかもしれない。今日の夕飯とか、仕掛ける悪戯の種類とか。
掻き乱された心は大津波を起こしたままだというのに。
その言葉はあたしの望む意味なのだろうか。ナツのことだから、仲間として、ということは十二分にあり得る。それも、嬉しくないわけじゃないけれど――今はそれ以上を、期待している。
もう少し、はっきりと言ってくれたなら。もう少しだけ、勇気をくれたなら。
いつまでこんなことを繰り返すのだろう。ナツに対する気持ちを見ない振りして、ナツの気持ちばかり探って。あたしは自分から逃げているだけかもしれない。いや、もしかしたら、ナツから逃げたいのかもしれない。中途半端に期待するだけなら、いっそ。
少し切なくなって目を閉じると、テーブル上に置いたままの右手が引っ張られた。視線をその先に辿らせると、桜色の、笑顔。
「ルーシィの一番もオレだよな?」
きっとナツがナツである限り、あたしはナツから逃げられない。