「そういう……おもちゃの家よ、と申しております」
「おもちゃだあ?」
「それにしては凄いな。住むことに不都合がない」
「ホントね」

こんな素晴らしいおもちゃがあるならもっと普及するべきだ。小さい家に住めるなら土地も狭くて済む。持ち歩きもできるし、宿代もかからない。しかもこんな大きさなのだ。材料費だって普通の住宅よりかからないだろう。
ハッピーが口元に丸まった手を当てた。

「ルーシィ、なんか貧乏くさいこと考えてるでしょ」
「なっ、べ、別に」
「顔が貧乏くさかった」
「それどんな顔よ!?」

言い返しはしたが、不安になって頬に触れる。
グレイが足で床を軽く叩いた。

「家に合わせてこれを作ったのか?」
「あ、そっか。特別注文よね」
「なんという会社が作ってるんだ?」
「エルザ、買うのー?」
「ちょ、今はそれどころじゃないでしょ」
「え?と申しております」

聞こえなかったのかと、ルーシィはホロロギウムの前にしゃがんだ。

「このおもちゃの家、家と……ってなんかややこしいわね。おもちゃじゃない方の家とそっくりじゃない。だから向こうを模して作ったのかなって」
「おもちゃじゃない方の家?と申しております」
「ん?」

ホールには横長の窓が一つ付いていて、そこからは壁が見えた。おかしなこと言ってないわよね、とそれを確認してから、少女に目を戻す。
彼女も窓の外を見ていた。ルーシィに気付いてハッとしたような顔をする。

「あ、ごめんなさい、ぼんやりしちゃって、と申しております」
「無理もない」

エルザが沈鬱な表情で頷いた。

「突然こんなことになれば当然だ」
「あい。大丈夫?」
「ありがとう、と申しております」

少女は淡く微笑んで指を組んだ。

「この家が先にあったの、と申しております」
「え?どういうこと?」
「これに合わせて、家を建てたのよ、と申しております」
「へえ」
「なるほど。他のご家族は?」
「私だけよ、と申しております」

ホロロギウムのガラスに、少女がぺたりと手をついた。

「家の魔法が暴走しているのかも、と申しております」
「なるほど、ならば……」
「……どうやって解決するの?」

敵が居るわけではなく相手は家そのものということになる。攻撃に対処することは可能だが、防御ばかりしていては意味がない。
グレイがくい、と窓を指した。

「外に出れば良いんじゃねえか?」
「ううん、と申しております」

少女の瞳に力が入った。

「どこかに、家の動力源になる魔水晶があるはず。それをコントロールすれば、と申しております」
「どこかに……?」

家全体から漠然と魔力は感じるものの、その出どころというとわからない。エルザとグレイを見返してみても、彼らにも感知できたわけではないようだった。辺りを探るように目を走らせている。
探そう、と提案しようと口を開いた時、ごごん、と地面から揺れるような感覚があった。






一難去ってまた一難。


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