「ん?何だよ?」
「んーん」
ルーシィにマフラーを狙われているような気がして、ナツはそれを手で押さえた。ちゃんと首に巻けているかどうか、確かめる。
短い確認作業ではあったが、ルーシィはその間こっちの行動をじっと見つめていた。それも気になる。
「何だよ、マジで」
「ナツはさ、マフラー以上に大事な子って居る?」
「あ?んー……は?」
質問がおかしい。
ルーシィ自身も気付いたようで、「あ、やっ、違う!大事な物!」と手を振った。
「大事な物……思い浮かばねえな」
破壊癖があるから、というわけではないが、ナツは特に物そのものに執着したことはない。生きてきた年月とともに愛着のある品は増えていくが、それでも物より思い出、だ。
「だよね」
どことなく寂しそうに笑ったルーシィを見て、ナツは自分の答えが彼女の期待を外したのだと直感した。視線をさまよわせる。
正解はわからないが、何かを言わなければならない。
「で、でも、えっと。マフラーとルーシィだったらルーシィの方が大事だぞ!」
「……え?」
「あ、えと。多分」
「多分って何!?」
ツッコミではあったが、ルーシィが笑った。たまに見せる、照れを堪えたような表情で。
正解だったのかもしれない。ナツは満足して、にっと口角を上げた。