立ち上がったデザインのウサギは、小さなその体のサイズにも係わらず毛並みも十分に再現されている。今にも動き出しそうだった。
細かい造形に感心して、ルーシィは唸った。感想がそのまま口から零れる。
「すごい」
「うん。食べるのもったいない」
隣のレビィがくすりと笑う。彼女の手にも、同じような物が乗っている。こちらはリスがくるみを抱えた形をしていた。
砂糖菓子――そう一括りにしてしまうには勿体ない代物だった。
先ほどジュビアが持ってきたときには、ガラス細工か何かなのかとルーシィは勘違いした。水色の髪の彼女が言うには、仕事でもらったが大量で、女の子を中心に配っているとのことだった。
ルーシィはウサギの鼻先を指でそっと撫でた。
「食べるにしても、どこから齧ったら良いかわかんないよね」
「そうだね。頭派と尻尾派ならどっちが多いのかなあ」
「うーん、尻尾じゃないかな。頭って残酷な感じするし」
「一口で食えよ」
いつの間にか、ナツが後ろから覗き込んでいた。相変わらず無遠慮な近さに、耳元がぞわりとする。
「ちょ、ナツ」
「砂糖なんだろ?齧りたくねえなら溶かして飲むか?」
「イヤよ!」
ナツの指先に点った小さな炎からウサギを遠ざけて、ルーシィは頬を膨らませた。しかしいつものように、彼はこちらの機嫌など気にしてくれない。取り立てて宥めてくることもなく酒場を見回した。
「ジュビアが配ってた奴だよな」
「仕事の報酬だって」
レビィが小さく首を傾げた。
「ナツも欲しかったの?」
「その仕事って、グレイも行ってたよな?」
「確か、そうだったと思うけど」
きゅぅ、とナツの眉間の皺が深くなる。何か心配事でもあるのだろうか。
「どうかし……わっ?」
警戒を解いた瞬間、ウサギが手ごと持っていかれた。急に後ろに引かれたせいで崩れたバランスが、脇腹を椅子の背もたれに強く打ちつける。
しかし呼吸が止まりかけたのはそのせいではなかった。
「なっ、何してんのよ!?」
手を齧られている――と、感じたのは誤解だったが、ほとんどそう言っても良いような接触だった。ふんふん、と鼻を鳴らしているところからウサギの匂いを嗅いでいるのはわかるが、指にはナツの唇がぺたりとくっ付いている。
反射的に殴りそうになったが、それよりも早く彼はぺい、とルーシィとウサギを解放した。
「グレイの匂いはしねえな」
「は、はい?ジュビアから貰ったんだってば!」
「わかんねえだろ。どっかで触ってるかもしんねえ」
手の中のウサギは意思のなさそうな瞳で虚空を見つめている。決して合わないその視線を無意識に眺めて、ルーシィはトクトクと急ぎ始めた――ナツがウサギの匂いを嗅いだときからすでに急いではいたが――心臓に手を置いた。
ルーシィの貰った物に、他の男の影を疑う――
これではまるで、独占欲のようではないか。
口の中が渇く。瞬きも出来ない。
「ぐ、グレイが触ってたら……何だって言うの?」