「ナツ!?え、消え……」
「行ったか」

過去のオレ――いあ、厳密には現在のオレで、オレが未来のオレだったんだけど――が光って消えた。あの日に戻ったんだ。
オレはおろおろするルーシィの肩を引き寄せた。

「大丈夫だ、オレはここに居る」
「あんたじゃなくて!」
「いあ、オレだっての」

傷付くな。ルーシィってホントオレとアイツと平等って言うか、むしろあっち寄りな気がする。自覚するって結構辛いことだったんだな。ルーシィの全てがオレに向いてないと不安になっちまう。
ま、オレ相手じゃなきゃ、ここまで危機感持たなかっただろうけど。

「どっから説明すっかな。あのナツとこのオレは同じで」
「それはわかってるわよ!あのナツはどこ行ったの!?」
「えーと、一昨日」
「はい!?」
「で、オレになったんだ」

ルーシィって普段バカなとこあるなあって思うけど、意外と頭良いんだよな。この最低限過ぎる説明で、色々補ってくれる。

「一昨日……に、あんたが増えたの、今のナツが時間を遡った、ってこと?」
「お、そうそう!」
「な、なんで?どうやって?」
「それはオレもよくわかんねえ」

アイツが居たとこに、石が落ちてる。もう黄緑色でもない、普通の石だ。二度はないってことだな。
オレは一応拾ってポケットに突っ込んだ。振り返って、まだポケッとしてるルーシィを正面から見据える。

「で、だ。一人になったから、これからはオレだけだからな」
「え、あ……そっか。なんだか寂しくなるわね」
「なんない。お前が一人なんだからオレも一人で良いんだよ」
「うん?」
「好きだ、ルーシィ」

ルーシィの目が大きくなる。

「ずっと、言いたかった」

ホントは、一昨日に戻った瞬間言いたかった。でももう一人のオレが気付くの待たねえと、ずっと二人になっちまうから。
ようやく、言えた。これで、ルーシィはオレだけの……って、なんだその反応。

「え?え、え?」

驚くのは百歩譲ってわかる。こんだけ隠さなくてしかもちゅーまでしようとしたってのに驚かれるのはこっちがビックリだけど、ルーシィだからまあ、鈍くっても構わない。
けど、なんですぐ答えねえんだ?ほら、あたしも!とか、好き!とか、なんなら抱きついてくれても。

あれ?

「おい……まさか、気付いてねえの?」
「な、何?」

マジか。
ルーシィ、オレに惚れてんのに。
目線、距離、声のトーン、態度。オレと同じ気持ちだってこと、すぐわかるのに。

え、もしかしてこれ、オレがルーシィに惚れてるって自覚したから気付いたことなのか?そうだっけ?いあまあ、確かにそれまでそんな感情、考えたことなかったけど。

「……嘘だろ?じゃあオレ、ナツの次はルーシィを自覚させなきゃなんねえの?」
「な、何の話?てか、ホントにあんた、あたしのこと」
「うあ、疑うとかねえわー」
「引いた!?」

まあ良いか。ルーシィがオレに惚れてんのは間違いねえし。
今は一方的でも、言ったらすっきりした。これからルーシィをどうするかは置いといて、まずは……そうだな。家の陰からこっちを見てる猫とガキをどうするか。そっちの方が先決かもしんねえ。
くそ、そういえば全くフォローしねえで動いちまったんだよな。オレにとってはもう二日前のことだし忘れてたけど。ハッピーのことだから、『ナツがルーシィに告白してフラれた』って言いふらすんじゃ。そんなの、グレイとかガジルが笑うの目に見えて……うがー!ムカついてきた!
オレはルーシィに指を突きつけた。

「ルーシィ」
「は、はい」
「オレはフラれてねえからな」
「っ……、う、うん……」
「ダメだお前。やっぱ早く自覚しろ」
「だ、ダメって何が!?」
「食い付くとこそこじゃねえし」

くっそ、ちゅーしてえ。
頼む、ルーシィ。
早く、オレに惚れてるって自覚してくれ。






自覚ナツでもルーシィに敵わない。


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