「おーい」
居ないのは気配でわかるけど、一応な。
オレは適当にルーシィを呼びながら布団捲って風呂場を見に行った。やっぱ居ないから、もっかいベッドに戻ってそこに寝る。
さすがにもうあったかくはねえけど、冷たいってほどでもないんだよな。空気に触れてない分、布団の中ってルーシィの匂いが濃いし。昼寝に気持ち良い……けど。
あ、ダメだ。やっぱ昼寝で終わらねえ。深……ふか、く、ねち……。
「ん……?」
足音が聞こえる。なんだよ、帰ってきたのか。あー、体動かねえなあ。まあ良いか、起こされるまで寝てて。今日ももちろん泊まってくつもりだし。あれオレ、ここ三日くらいは自分ち帰ってねえな。
「入ってー」
「おう」
へっ?
眠気覚めた。ついでにちょっと体温も下がった気がする。この声ってあれだよな。間違いねえよな。
「ありがとう、ラクサス」
やっぱだ!なんでルーシィがラクサス連れてくんだよ!?
つか、この部屋にルーシィが誰か入れるのって珍しくねえか?それもなんでラクサス……くそ、オレのことは勝手に入るなって言うくせに!
「いや、ついでだったからな」
んん?なんか置いた音がしたな。ルーシィが礼言ったとこから考えても、何か持ってもらってたのか。でもそんなの、ロキとか牛とか居るじゃねえか。
「ナツね。でも今日は居ないみたいよ。残念だったわね」
ルーシィの声がちょっと遠くなった。台所に移動したな。つかオレに用かよ、ラクサスの奴。オレは全く用なんかねえぞ。
「おい」
「おわっ」
オレの布団!くそっ、気付いてたのかよ。別に隠れてたわけじゃねえけど、なんか後ろめたいじゃねえか。
「えっ?ナツ、居たの!?ってかあたしのベッド!」
ルーシィが戻ってきて喚く。もっと派手に驚いて欲しかったんだけどこれじゃしょうがねえな。
「何の用だよ」
「じじいが呼んでるぞ。また何かやらかしたんだな?」
「あ?」
何のことだ?
「オレ、何かしたか?」
「あたしに訊かれても。あ、昨日ギルドでエルザに喧嘩売ったって、ハッピーから聞いたわよ?」
「んー?」
身に覚えがねえな。まあ何かっちゃ壊してる気はするけど、いつもどおりにしか行動してねえし。そんなのいちいち怒ってられねえだろ、じっちゃんも。
ラクサスは面倒くさそうに顎をしゃくった。
「とにかく引っ張って来いって言われてんだよ。大人しく付いて来い」
「げー……ルーシィ、オレのハンバーグ残しといてくれよ」
「はい?って、さりげなくハンバーグ要求すんな!今日はグラタンよ!」
「ハンバーググラタンか」
「違う!」
よし、ちゃっちゃとじっちゃんの用事済ませて、戻って来るか!
「じっちゃん、ギルドか?」
「ああ。邪魔したな」
「ううん。荷物ありがとうね、ラクサス」
「オレは?」
「人のベッドに寝てた奴に何を感謝しろと?」
「温めておいてやったんだろ」
「へえ。ありがと」
棒読みだし睨んでくるけど面白い。だからルーシィって、えと……一緒に居ると楽しいんだよな。