ベッドの下に転がったナツが唸りながら起き上がった。多少良い具合に決まってしまったとは思ったが、全力で攻撃したわけではない。むしろ痛がり過ぎだろうと思う。
ルーシィは枕の横に転がっていた本をぱらぱらと捲って、折れたページがないかどうか確認した。大丈夫そうだ、と軽く頷いたところで、ナツが口を開く。

「ルーシィ」
「何?」
「『金目の物を出せ』ってよ」
「もう良いって」
「いあ、聞けよ」

ナツは口をへの字に結んでから、自分の胸に親指を向けた。

「お前が言われないのって、オレが居るからだからな」
「え?」
「オレが言わせねえ。オレは生きるしルーシィも守る」
「な、何、それ」

一瞬頬が熱くなったが、不自然な言い回しが内容よりも引っかかる。
ルーシィが疑問符を浮かべると、ナツは目だけで本を示した。

「そんなないない言いたくねえ」
「……あ」

『お前を守れなかったら、俺の生きる価値がない』――確かに、否定の仮定から入るのはナツらしくない。
初めから、言って欲しいセリフには気付いていたのか。

ずるい。

期待すれば肩透かしを食らわせるくせに、諦めれば想像以上の結果をくれる。良いだけ翻弄されて、それでも結局、この言葉しか出て来ない。

「ありがとう」
「ん」

頭を掻いたその手には、爪の跡が残っていた。






でもセリフとしては格好付かない。


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