失望が頭を重くする。秘密にされなければならない理由は何なのだろう。また悪魔が槍を構える――。
ナツがそれをぶつぶつ言いながら遮った。

「ルーシィは、ルーシィで、ルーシィだから……ルーシィだし」
「あい?」

言いたいことがさっぱり理解できない。ハッピーが懸命に読み解こうとしていると、先にナツが痺れを切らしたように膝を叩いた。

「だから!ルーシィが……なんかこう、他の連中とは違うってことくらいはわかってんだよ。ルーシィがルーシィじゃなきゃ……」

息を止めるように言葉を止めて、ナツが瞳を左右に揺らす。何と言ったら良いのかわからないらしい。
彼は緩く頭を振って、簡潔な一言で締めた。

「ダメだ」
「……あい」

恐らく、彼が言いたいのは『ルーシィじゃなきゃイヤだ』なのではないかと、ハッピーは推測した。この告白を、どうして否定から入るのだろう。

わけがわからない。

疑問符しかなくなった脳を、かくりと傾ける。
ナツがそわそわと肩を揺らした。

「で、でも、だからってそうとは限らねえだろ。そうかもしんねえ、くらいで」

語尾が小さくなる。自信のなさが表れたそれで、ハッピーは唐突に飲み込めた。

ナツの否定は、隠していたわけではない。
ただ、わかっていないのだ。自分の持つ感情が、恋であることを。

ナツはそれをずっと抱えていたのかもしれない。吐き出せたことで安心したかのように、ぺらぺらと舌を動かし始めた。

「オレだってな、そうならそうで男らしくはっきり言いてえんだよ。でも今までそんなんじゃなかっただろ。会ってから大分経っちまってるし……今更そんなの言ったら、なんか告る勇気なかった奴みたいで情けねえじゃねーか」
「会ってすぐ告白する人なんてロキくらいじゃないかな」
「大体だな、オレがそういう……す、好きだの何だの……キャラじゃねえって言うか。オレはもっと、強くなって、いっぱい色んな仕事して、それで良いんだよ。女に構ってる暇なんか」
「ルーシィだよ?」
「そ、そう言われると、またわかんなくなるだろ!」

両手でがしがしと髪を掻き混ぜて、ナツはそのまま頭を抱えるような姿勢で止まった。眉間に深く皺を刻んで、呻く。

「とにかく、もうちょっと放っといて、」
「ナツ、初恋?」
「なっ!?だ、だったら悪いのか、って、違う!まだわかんねえよ!」

別にからかっているつもりはないのだが、反応が面白くてイタズラ心が擽られる。なんとか口元を引き締めると、ハッピーは漏れた笑いを咳払いで散らした。
ナツが居心地悪そうにもぞもぞと足を組み替えた。

「お、オレは違ぇけど……ハッピーはシャルルに惚れてんだろ?いつわかったんだ?」
「会ったときにピーンと」
「ずりぃ!」

ずるいと言われても真実なのだからどうしようもない――と考えつつ、優越感には抗えなかった。つい、胸を張る。
ナツが手の甲で頬を擦った。

「くそ、ルーシィに会いにくい……」

彼がルーシィをこれまでにないほど意識している。彼女の方も、さっきのあの様子では、平常心では居られないだろう。これは良い刺激になったかもしれない。
二人、互いに目も合わせられないような、甘酸っぱい空気を想像して、ハッピーは舌の置き所がわからなくなった。考えているだけでもむずむずしてくる。






半分以上自覚しているけどそうと認められないナツ。


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