勉強





オレだって、学習くらいする。

「……」

ミラの視線が気に食わない。なんでも訊いて、みたいな顔しやがって。昨日からかわれたの、忘れてねーんだよ。訊くわけねえだろ。

ルーシィが今どこに居るか、なんて。

ミラに言われるまで気付いてなかったけど、オレはギルド来て、初めにルーシィを確認する。してる、らしい。
ルーシィは大抵どっかに座ってるけど、居ないときはミラに訊いてた。今までは普通に教えてくれてた癖に、昨日は『ナツはルーシィのこと気になるのね。好きなの?』なんて言いやがって。
今日も訊いたら、絶対言われる。今度は『ホントに好きなのね』くらい言いそうだ。

「ナツ?」
「あ?」

足元からハッピー。いつだって一緒に居る相棒。

「どうしたの?なんか凄い顔してるよ」
「なんだよ、凄いって。褒めても何も買わねえぞ」
「褒めてないよ」

まあ、イライラしてんのは認める。ミラはさっきから髪の毛一本動いてねえ。オレが訊いてくんの、待ってる。ってより、わかってる、って感じがする。腹立つ。
絶対訊かねえ。訊かねえけど、ルーシィどこ行ったんだ。まだ来てねえのか?
いあ待てよ、これ訊かないのが正解なのか?訊かなきゃ訊かないで『意識しちゃってるのね、カワイイ』とか思われんじゃねえの?別にオレにやましいことなんてねえんだから、いつも通り訊いた方が良いのか?
ちらっとだけ、ミラを確認してみる。くそ、わかんねえ。ギルドで何考えてんだかわかんねえ奴大会したら絶対優勝するよな、ミラって。
どっちにしても好きだの何だの言われんだったら同じ……いあ、訊かなきゃ言われはしねえか。でも勝手に想像されんのも。

「今度は唸り出したの?ちょっと怖いよ、ナツ」
「あーもう!考えてんの面倒くせえ!」

訊いてやんよ!訊けば良いんだろ!
オレはばん、とカウンターテーブルを叩いた。

「どこ行った!?」
「裏よ。お洗濯お願いしたの」

洗濯?ああ、今日良い天気だもんな。って、それは後回しだ。
さあ、なんでも言いやがれ。昨日みたいな反応すると思うなよ。言われんのわかってんだから、オレだってポーカーフェイスくらい、いくらだって出来るっての!
つか、別にルーシィのこと、好きじゃねえし!いあ好きだけどそんな風に思ったことねえし!ただちょっと時々ちゅーとかぎゅーとかしたいような気がするようなしないような、いあ、多分してねえし!つかしてたところでそんなのミラに関係ねえじゃねーか!

……あれ?

「ミラ?」
「なあに?」

なんだ、その話は終わった感。なんで皿拭いてんだ。

「言わねえの?」
「何を?」

え、全部オレの被害妄想だってのか?
拍子抜けだな。そか、別にそんなんじゃねえってちゃんと言ったもんな、オレ。ミラだってわかって――

「もしかして、からかわれると思って躊躇ってたの?」
「んなっ、ち、違っ」
「意識しちゃってカワイイわね」
「いっ」
「ホントに好きなのね、ルーシィのこと」
「っ、っ、っ、くっそぉおおお!」

なんだよこのフルコースで攻撃食らったみてえなの!しかもどうして今なんだよ!さっきならスルーできたのに!
うああ、顔が赤くなる!

「ミラのバカやろー!」
「ナツ、女性には野郎って言わないものよ」
「ぐ、うぅうう!余裕ぶっこきやがって!」

どんなに大声出してもミラが動じるとは思ってねえけどよ。あ、口から煙出てきた。懐かしいな、ガキの頃炎が上手く出せなくてよくこんな感じに……って、んなこたどうでも良い!

「オレは好っ……、そんなんじゃねえって言っただろ!」
「そうだよ」

おし、ハッピー!言ってやれ!

「ナツはルーシィのこと、好きじゃなくて、大好きなんだよ!」
「そうっ、そ、ああああ!?ハッピーの裏切り者!」
「ホントのことじゃないかー!」

尻尾にぎりっぎり届かねええ!翼なんて生やしてんじゃねえよ!猫だろ、地べた歩け!
これじゃあまた昨日と同じじゃねえか。ミラにからかわれて。今日はハッピーにまで。

そうか、わかった。今度こそわかったぞ。

オレが学習しなきゃなんねえのは、学習なんか意味ねえんだってことだ。






2015.1.8-2015.2.1拍手お礼文。


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