朝の光で目が覚めた。途端、
「っ痛…」
後頭部に鈍い痛みを感じて呻く。
体を起こしてみると、ベッドについた手に金属の目覚まし時計が触れた。
見慣れない、時計。
「?」
いや、時計だけではない。
寝かされていたベッドも。身に着けているキャミソールとショートパンツも。
恐る恐る視線を巡らすが、そこは見知った物のない部屋。
「え…?ど、どこ、ここ…?」
一体どうしてこんな知らない場所に連れてこられているのか。
思い出そうとして、顔色を失った。
「あ、れ?え、嘘。あたし…」
後頭部がずきずきと痛むが構っていらず、言葉を零す。
「あたし…誰…?」
愕然としつつも部屋のチェストなどを調べて、自分がこの部屋で一人暮らしをしていることを突き止めた。
「とりあえず…シャワー浴びて着替える、か…」
いつまでもこの格好では心もとない。窓に近寄って外を見た。
「春、か…初夏?涼しい格好で良さそうね」
ふと、窓の鍵がかかっていないのに気付いた。
「かけ忘れ?まぁ二階だし、いいんだろうけど」
適当に服を見繕ってシャワーを浴びる。
鏡に映った自分は、やっぱり見慣れないものだった。
「ん、結構かわいいじゃない」
年は16か17くらいだろうか。まっすぐ伸びた金髪と、整った、と言える顔立ちに一安心した。
「これからどうしようかなぁ…」
思い出そうとしても何も浮かばない。
「…一人暮らしってことは仕事してるのかな。仕事先から連絡くれば良いけど」
誰か、自分を知っている人物に会いたかった。
身支度を整えて部屋に戻ると、テーブルの上に何かが置いてあるのに気付いた。
「鍵?こんなにたくさん…別荘とか倉庫とか持ってるのかしら?」
金色と銀色の鍵束を持ち上げてしげしげと見つめる。
「…これ、もしかして星霊魔法の鍵?あたし、星霊魔導士なの?」
問いかけてみても答える者は誰もいない。
鍵を手に、試しに呼び出してみようと思ったが、
「…呼び出し方も忘れたみたいね…」
溜息が出た。
椅子に腰を落とし、項垂れる。
と、
バタンッ!
背後からいきなり物音がした。
背中側にはベッドと窓があるだけのはず…。
振り向くと、開け放たれた窓から男が入ってくるところだった。