藤色に笑ふ(沖田) 「煉獄って知ってる?」 右手首をミシリと踏みつけてブツリ、ザクリ、ビチリ、乱雑に斬っていく。 勿論、名も知らない浪士は酷い痛さに悶絶し、身体を幾度もバタつかせた。 (まるで、足を数本抜かれた蜘蛛みたいに。) 「滑稽だね、唯一左手だけが救いだったのにね?あ、でも両足なけりゃ逃げられないか、死ぬだけだったね?じゃあもう、左手もいらないよね〜?」 煉獄って今、あなたが存在して背負っている痛みのこと。言っても無駄みたいだから言うのはやめた。 だって、死人が私の話を聞いて喋る筈は決して無いのですから。 その先の先のこと、(永倉) 考えたこともねェわ、今日の晩飯をちゃんと繋がってる両手で食べれりゃいいなってぐらいでよォ。 貴女が私の全てなもんで。(芹沢+お梅) 「ウォォォオッ!誰だアアア!俺が隠していた羊羮を食べたのはァアァア!これはアレか!過激攘夷派の仕業かあああ!よくもぬけぬけと屯所の中に入って俺の羊羮を食べやがったなぁぁあ!見付けたらただじゃすまさんぞ!!絶対に許さん!!!」 「鴨はん、羊羮食べたんはウチなんや」 「あ、そうなの?いいよ、別に。美味しかった?」 「うん、美味しかった」 「よかったよかった」 旁(山南+平助) 「平助は、兄弟はいるのかい?」 「分かんない。たまに自分さえよく分からないことがあるから」 「親は、江戸に?」 「ううん。知らない」 「それは寂しいなぁ」 「寂しくなんかないよ、一人は慣れてるから」 「そう、か…」 「うん」 「じゃあ、私が平助の側にずっと居てあげよう」 「本当に?」 「ああ、」 「ずっと側に居てね、山南さん」 気丈に!(原田) 「くよくよすんな!人間完璧にはなれやしねぇんだぜ?完璧な人間なんか絶対いねぇ。完璧だと思っていても、それは間違いだ。ほらみろ、土方さんなんか役者みてぇな綺麗な顔してっけどよ、俳句はからきしダメなんだぜ。まぁこういう風にだな、人間は完璧にならねぇよう作られてる。だから少しの失敗で落ち込むなんざバカらしいっつー話だ!な、ちっとは前向きになれただろ?」 口実向上(斎藤←永倉) 「なぁハジメ、屯所に幽霊出るって知ってたか?」 「……幽霊、だと…?」 「廊下をズルズル這ってきてさ、部屋の障子開けて中に入ってくるらしいぜ。幽霊さんも律儀なこった」 「殺すぞ、冗談はよせ」 「まぁ冗談かどうかは知らねーがよ。…つぅか今晩総司は夜勤でいねぇんだったな。今日幽霊が出ないことを祈っとくぜ。じゃ、おやすみな」 「待て…!」 「あ?」 「貴様…御丁寧にそれだけを言いに来たのか」 「おぅ、ちょっと涼しくなる怪談話を耳に挟んだからな」 「……この部屋を出ていったら殺すぞ」 「……はいはい。一緒に寝ればいいの?」 「一緒になど寝らん!そこの押入れから布団を出して、俺の数間先で一人で寝ろ」 「どうすんだよ、押入れから幽霊出てきたら」 「っ…一緒で、…いい」 「はいはい」 「なっ、何故こっちを向いて寝る…!」 「じゃあお前がアッチ向けばいいじゃん」 「当たり前だ!」 「どうする…?実は俺が幽霊だったら。お前の背中、じわじわ冷たくなってくるかもよ…?」 「コッチ向いて寝る!!」 「こんな真夏に男二人が密着して、しかも向かい合って寝るとはねぇ、笑いもんだぜコリャ」 「もとはといえばお前が悪いんだろうが!!」 「はァ?幽霊を怖がるお前が悪いんだろ」 「怖がってない!」 「あっそ」 「…何だ、この腰に回された手は」 「お前が怖がらないようにと思って。安心するだろ?」 「ふざけるなっ…!」 「嫌だったら振り払え」 「……嫌じゃない。」 「おやすみ、ハジメ」 「………おや、すみ…。」 (緊張してんのかぎこちないのか、そわそわしてお前はどこのガキだよって。お前が寝るまで俺は寝たふりをしておくが、お前が寝たら俺は起きてよう。簡単な作り話で騙されてくれて有難う。ああ、嘘つきは泥棒の始まりって言うけどなァ。本当、今は幸せしか頭に無い) そこはかとなく(沖田+平山) 「平山さんと源さんって同じ歳ですよね?」 「いかにも」 「源さん苦労したのかなあ…。だって、平山さんが仏壇に飾った花なら、源さんは一週間前に飾った仏壇の花ですよ」 「お、沖田君…!?」 「源さんが老けているのか平山さんが若いのか…私にはどうも分かりません」 「こ、この話は内密に…!井上さんには絶対言っちゃダメだよ…!」 暗全限界(平助+沖田) 「平助、伊東さんたちと行っちゃうんだね」 「…うん。」 「私の一君も、奪って行っちゃうんだね」 「え…?」 「バイバイ、平助」 後段(相生+吉栄) 「そないヨーケ入ったてんこもりの葛切り、よう食べれるなぁ吉栄は」 「美味いもん」 「ああもう、これ見とぉみ、黒蜜べべにこぼして…!ガサやなぁ」 「ふふ、姐はんが昔からウチを甘やかすさかい」 「てんやわんや言わんの」 「あ、ジョジョにまでこぼしとったぁ」 「ナンギなこっちゃなあ、ゆっくり食べ」 もう言わないよ(服部+加納+毛内) 「斎藤君を上から見下ろした眺めも良いけど、下から見上げる眺めも良い。あの火照った顔が何とも言えない」 「服部さん、それってどういうイミですか?下から眺めるとか、火照った顔とか…」 「毛内さん、それ以上は聞かなくていいですから」 ← ×
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