親切墜落常時報(斎藤+永倉)

「永倉さん、もう稽古はやめて夕飯にしませんか」
「お、そんな時間か」
「永倉さんの食事、ちゃんと準備しておきましたから」
「悪ィなハジメ」
「早く食べないと冷えますよ、京の風はまだ寒いですからねぇ」
「…あ?」
「外の門の所に御膳ごと置いてます」
「お前に少しでも感謝して微笑んだ俺の行動は無に還ったぜ。刀持って来い、叩っ斬ってやらァ」
「嫌、お腹空いた」
「クソハジメェエ!」



畏怖感の涯(土方+近藤)

「なぁトシ…、今日道場で見ただろう?服部さんの技量。あれは組長を誇れる強さだと思うんだが。その、監察には勿体ないかなー…って…」
「ああそうだな、勿体ないぐらいの強さだったな」
「いま完璧に棒読みしただろう…!?」
「組長に昇進したかったら自分から言ってくるだろ。言ってこねーから奴は監察でいいんだよ」
「あのなぁトシ、お前子供じゃないんだから…」
「あいつは監察でいい!もし組長になんかしたら…軍事会議で広間に皆を集めさせた時、絶対と言っていいほど斎藤の横に座りやがる!そんなのはダメだ!絶対ダメ!許さねぇ!」
「…トシ、落ち着こう?」



そういう問題でもないのでですね…(山崎+原田)

「やっぱりあそこが長州浪士の密会場所やったんやな…」
「まじかよ」
「薬売りにでも変装して、もっと探りいれなあかん」
「よし、じゃあ俺は女装してザキさんを全力で支えるぜ!」
「つぅか…ドコからわいて来よったんか!今任務中やろ!邪魔せんといてや!」
「ふふ、心配御無用。俺の女装はピカイチだ」
「そんなデカイおなごおらんわ!!」
「ザキさん化粧道具持ってる?」
「あんさん人の話ちゃんと聞いとるんか!?」



無邪気に笑うから(芹沢+お梅)

「千代紙集めて何するん?」
「ん、折紙」
「なんでまた…」
「折りたくなった」
「…なんやそれ」
「しかしだな、この千代紙…お梅みたいに綺麗なもんだから勿体なくて折り目すらつけられん…」
「ぷっ…おかしい鴨はん」



噛み付き殺すと君は狗賓(佐々木+斎藤)

「誰がっ、誰が…こんな抱き方をしろと言った…!下ろせバカ…!」
「何?嫌いなの?お姫様抱っこ」
「当たり前だッ」
「仕方ないんじゃない?偶然に非番だった君が偶然に非番だった俺の目の前で、偶然に転けて偶然に足首捻って歩けないんだから」
「っ…武士たるもの、このような恥辱な格好は…!」
「俺の中で君は武士じゃないよ、俺を淫靡に誘う女狐ちゃんってところかな」
「貴様あああ愚弄したな!無様な姿の俺を侮辱して楽しんでいるだろう!?」
「はいはい、いつまでも騒いでると口塞いじゃうからね?」
「…なっ、」
「よし、今から茶屋に行こう」
「はァ!?」
「茶屋でお姫様抱っこが恥辱な格好じゃないってこと、教えてあげる」
「!?」
「他に、いっぱい恥辱な格好しようね」
「するかああああ!離せええええええっ」



虚ろう意識に遠吠えた(平助+斎藤)

「一、林檎切ってきたよ」
「…ああ、」
「あーんして」
「ん…」
「たくさん食べて早く風邪治さなくちゃね」
「…んん」
「林檎おいしい?」
「………固い。」
「食べやすいようにすってきてあげようか?」
「…いい」
「でも…僕は少しでも一に食べてもらいたいもん」
「…お前が、…へーすけが食べて砕いたのを、そのまま、口移しでくれれば…そんな手間、いらない…」
「へ!?」
「…と、思ったけど…固い林檎もシャクシャクして、嫌いではない…」

ボトッ…ボトトッ…

「おい…林檎を布団に落とすな…」
「落とすよ!!」
「…なに逆ギレしてんだ、お前は。うるさいぞ…」
「本当に今、無自覚で言ったの!?!?」
「無自覚もクソもない。発言したまでだ」
「ああもうっホントに天然ってこれだから怖いよ!そういう事、僕以外の人に言っちゃダメだからね!?」
「…は?」
「分かった!?!?分かったら返事!!」
「いや、それより早く布団の上の林檎を拾えって…」
「返事は!!!」
「……はい、…」
「それでよし!!」



ぬくもりと、(沖田+土方)

昔話を思い出すとします。

「土方さん、厠一人で行くの怖いから…一緒に着いてきてくれませんか」
「はア!?」
「手を繋いで」
「アホ、大の大人が何言い出しやがる」
「繋いでくれてたじゃないですか」

くだらないと土方さんは言いますが、くだらないのは私の思考だと、小さい頃の私は小さいなりに思っていました。
私は知っていました。夜の寂しさも静けさも、物悲しさも哀愁も。

(怖さも知っていながらの、子供が子供じみた子供なりの芝居をしながらも、怖いと口に出してしまえば温かさを得ることだって、)


「土方さんの手、あたたかくて大好きでした」



無し為した結果欠陥(服部+篠原)

「篠原さん、斎藤君の本名は山口ってこと知ってましたか?」
「いや、知らなんだ」
「何故斎藤の姓を名乗るようになったのか気になるんです…。まるでお嫁に行ったみたいで…」
「ほぅ、べえは追求するのがお好きだねぇ」
「どうせなら服部でいいと思いませんか、篠原さん。服部一、ぴったりでしょう?」
「そうだな、ぴったりだ。微笑ましいよ」
「有難う御座います」



瓦落ちました(毛内+加納)

「どうしよう道之助!片方の下駄阿部さんの履いてきちゃった!」
「うわぁおっ!阿部さんから絶対憎まれ口叩かれますよ!」
「どうしよう道之助!財布が懐に入ってない!」
「何回目ですか!でもそんな毛内さんは大して大金所持してないから大丈夫です!」
「どうしよう道之助!今日朝から風呂入って何だか心に余裕が無くて下帯巻くの忘れた!何だか股が涼しいもの!」
「何で気付かないんですか!風が入って寒いでしょうに!!」
「どうしよう道之助!刀忘れた!」
「あんたはそれでも武士ですかッ!!」



裏返してごらんあそばせ(伊東+阿部)

「阿部君は不器用な優しさを持っているよね」
「不器用でも何でも…優しくなどないですよ」
「優しいよ、誰よりも」
「…どうしてそう思うのですか?」
「どうしてって、見れば分かるものさ」
「毒舌だと言われますが」
「それは愛情」
「酷いことを言って他人を傷付けますが」
「それも、愛情」
「よく分かりません…伊東先生が仰ってること」
「君、私に西陽があたらないように自らそこへ座ったでしょう?」
「……それは、」
「ね、ほらね?」











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