空が青ければ青い程、心が晴れ渡る気がした、何か良い事が起こりそうな気がした。しかし、空が灰色の日でも雨の日でも、どちらでもない日でも、空が青い日でも変わりのない日は変わりがなかった。
けれども今日は空は青い。

「何皿目?」

と、隣で優しく微笑まれた。
沖田は七本目の団子の串を口に咥えたまま、もごもごしながら皿を数えていると、隣で優しく微笑んでくれた斎藤が、「お行儀が悪う御座いますよ」と、冗談ぽく声に出して言った。

「どのくらい食べたかなぁ」

沖田と斎藤の間には、重ねられた皿が幾枚もある。沖田はその皿を数えるでも何でもなく持ち上げると、自分自身の右側へ置いた。そうして、皿が置いてあった場所へ身体を移動させると、斎藤の右腕と自身の左腕を組み合わせる。

「あったかいな、一君」
「…お茶、飲みにくいでしょう」
「ううん、別に。あったかいから、いいの」
「そうですか、」

団子を食べ終わってしまっても、組んだ腕は離れない。青空を流れる雲を見ていると、どちらが流れているのか分かりやしなかった。

「一君とずっと一緒にいたいなぁ」
「じゃあずっと隣にいて下さい」
「うん、私たちずっと一緒にいられると思う」
「そうなんですか?」
「だって、私を斬り伏せられる人はいないし、一君を斬り伏せられる人もいないもの。私たちが互いに互いを斬らない限り、私たちはずっと一緒にいられる。そういうこと、」

沖田は真面目に、斎藤の目をじっと見つめる。

「一君、ちょっと今の時世が落ち着いたらさぁ、京の甘味屋巡り付き合って」
「沖田さん、骨董屋も」
「ふふふ、そうだねぇ。ああ本当に楽しみ、一君忘れないでね」
「忘れませんよ、だって沖田さん、俺の隣にずっといるんでしょう?」


時間の流れは決して遅くはなく、早くもない。一定の時間で過ぎ去り、灰色の透き通った雲は、逆回転を始めている。
永遠はないが、記憶に其れはある。

約束か希望か。
淵か墜か。
誠か夢か、現実か。


end











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