石を積み上げていた、裸足のまま外に出て、一生懸命に、とは言わぬ様であるが。


「ああまた崩されてしまった。鬼に崩されてしまった。」

沖田さんは小さく呟いていた。
夕焼けに消えてしまいそうな小さな背中が、いつもより丸くなって揺れる。可笑しいのか泣いているのか。

人間を殺した後もそうである。

首の無い身体の横に座り、刀の切っ先で墓石を描く。
身体を裂いた肉の脂肪と鮮血がヌラヌラ刃を光らせている。地面に黒いシミを作る音は聞こえないが、刀の切っ先が地面を裂く音は耳を劈くようにヨク聞こえていた。

ガリガリガリ、ガリ。小石や砂に当たり、刀の切っ先が潰れていく。

「沖田さん」

聞こえないのか、聞こえないふりをしているのか。

「沖田さん、」

聞こえたのか、しかし顔は向けない。

「なに、一君どうしたの?」
「刀、そんな風に使っては人を殺す時に使い物にならなくなる。」
「まだ斬れるよ」
「切っ先を崩しては身体に刺しにくくなります」
「いいの、刀の根本を首に当てて、思いっきり引けばいいんだから」

そうすれば首が取れてまわりは血の海になる。沖田さんはそう告げた。


「何を描いているんですか?」
「墓石。」


優しい人だなぁと思った。

刀の切っ先にピチャピチャと血をつけ、描いた墓石に名前を入れる。沖田さんの字はいつ見ても豪快で綺麗だなぁと感じた。


「はい、一君と私の墓の出来上がり」
「え?…それ、たった今殺した人間の墓石じゃないんですか?」
「違うよ、だってこの人の名前分からないもん。もう喋ってもくれないし」
「ああ、…そっか」

遠くの転がった生首を見る。目は開いている、口も開いている、けれど視線は合わない話せない。



「一君の綺麗な身体、その身体突き破ってみてもいい?」
「墓石の意味を教えてくれたら、どうぞ」


すると此方に顔を向けた。

end











×