「咳を何度もした後味は気持ち悪くて、呼吸が止まりそうな感覚がとても怖いです」

刻も分からぬ夜更け、服部の腕の中で斎藤は呟く。まるで情事中のように、斎藤の肩は上下に揺らめいていた。

「もし息が止まった時は助けてあげるよ、」
「…服部さん、もう横になって下さい。私に、構わず」
「大丈夫、君を抱いて座ってる方が私には心地良いから」

月明かりの消失さえ愛しく輪姦する瞼に接吻すると、服部は優しく斎藤の背中を撫でた。

「沖田君、結核みたいだよ。うつっちゃったかな?」
「……まさか…、」
「なにが?」
「…うつることが、です…」

左足を服部の手が這う。逃げられるということは足があるということ。抵抗できるということは手が千切られずにあるということ。

「そうだよね、沖田君の結核がうつる筈ないよね。だって、離別したもんね?そうかぁ…斎藤君は風邪引いちゃうと中々治らない子だったのかぁ。大変だね、きついよね?ずっとこうしているから、ゆっくり休むといいよ。おやすみ、斎藤君」
「…はい、おやすみなさい。」


夜が明けても、左足を這う温かい手はそのままであった。

end











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