山南さんの介錯は私がすることになりました。

介錯、腹切り、それは急がせるものではないのです。しっかりと御別れをし、覚悟を決めた上で行うものなのです。
だからこそ首が飛ぶ瞬間、みなさんは息を呑む。そしてその人の生前の姿と首がない滑稽な姿、中々絵合わせができずに苦悶してしまうのです。これは本当。


「さよなら、明里」

山南さんは格子から手を伸ばし、涙を流しながら辛い御別れをしていました。
何度も明里という名を呼びながら、格子の外へ外へ手を伸ばすのです。

(山南さん…。あちらの世界の方が見えていらっしゃるのですね。それとも、既にあちらの世界の方が御迎えに?いいえ、だったら"さよなら"とは言わぬはず。)




「不思議だなぁ、格子の外には誰もいないのに」




end











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