平助がひょっこりと姿を現したのは、私がとても弱くなって消えかけていた頃である。

「沖田さん、お見舞いに来たよ」

白い綺麗な花を持っていた。そして、下駄も脱がず庭から座敷へと上がり、平助はにっこり笑って私の肩を思い切り踏んだ。だから、全てが泥だらけになってしまった。

「お見舞い、有難う」

体を起こして平助の手を握りたかったが、肩を踏まれていては起き上がれない。けれど、平助は私を気遣って起きなくてもいいよと、そう言ってくれている。
少しだけ甘えようと、少しだけ目を瞑れば、頭を足で酷く小突かれた。

下品な笑いが聞こえた。


「ああ情けないな、沖田さんは。いちおう新撰組の一番手なんでしょ?近藤さんと土方さんと一のイッチバンのお気に入りなんでしょ?なのにこんなしみったれた古くさい部屋で寝んねしてぇ…。大体ね、あんたが尊敬してやまない大将が追い込まれてるって時に、こんなザマはないんじゃないの。まぁあんたの大将あっさり死んじゃったけど。あれはダメだったね、あんたが病気になってからやる気なくしてたみたいだから。所詮悪党の哀れな最期、首落ちる瞬間なんざ興味はなかったよ。ほんと師弟そろって似た者同士!武士の風上にも置けないな、しょーもない終わり方しちゃって。武士はね、散り際が肝心なんだ、僕みたいに。お前にようやく勝てた、それだけで僕は幸せだよ」


顔に投げつけられた白い花が無惨に散らばる。

「葬式葬式」

笑う平助と、泣く私。
てめぇの葬式なんざ誰も参列しねぇよ、と、蹴られた左頬がとても痛かった。


end











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