痛みに泣いているのか今までの自分が行ってきた罪を嘆いているのか、指を切り取られて刀をうまく握れなくなったことが悲しくて泣いているのか。それはないはず、だって切り取ったのは僅かな情けを掛けて右手の指だから。
その右手の指は悪臭を漂わせながら火に炙られ灰となった。その一連の流れを見て悲しんでいるのだろうか、まさかそのような筈はない。

「ねえ、どうして泣くの?」

沖田さんは血も涙もない奴だと誰かが言っていたから、果たして本当にそうなのだろうかと試しただけなのに、今は右指から流れる血も涙も止まらない。血も涙も出るってことは生きてるのか。生きてるんだね、沖田さんは。

「僕の記憶から殺したいんだけど、どうしたらいいのかな」

灰にしたって意味がない、灰になっても終わりではない。僕は貴方を覚えている。覚えていては意味がない。
血まみれの右指を左手で握り、蹲ったまま泣き続ける沖田さんは、こんなにも弱かったんだ。人間って、こんなにも弱いんだ脆いんだ儚いんだ。

「こんなにも崩すことが容易いだなんて知らなかったなあ」

もっと崩すとどうなるのだろう、流し続けると血も涙も枯れるんじゃないのかな。そうなれば燃やして、灰にして。それでもやはり記憶からは消えないから、本当に消えないから、いや、でも僕はそうなる過程が楽しいから楽しい記憶にすり替えられるのでは?

「お前が永遠から消えたら、僕は永遠に楽しく笑って過ごせるだろうね。それは一瞬で消えるのか、じわじわと消えて行くのか、」

人間は弱くて滑稽で、みっともない。


end











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