真赭の瞳で咎められては慟哭は存える。そう感じて不意に閉じた物に栞は挟んだのか。圧死させたのは誰のせい。

「他の感情を持って生きる事も出来たと思う、若しくは出来なかったと思う、どちら」

無疵の答えである。息をするのを火が消えるように終わらせ、斎藤は目を閉じた。閉じても原田の煉獄のような目色が映り、眼球から頭部、身体が焼きつくようである。

「為るようにしか為らなかったのだと思います、何を選択しようと」

腰へ回された手に力が入り、また更に抱き寄せられると床に皺が入る。顔を上げると唇が触れ合ってしまいそう、だと分かっていて、唇は既に触れ合っていたことに気付いたのは手遅れだと自信を宥す、愚かさ。

「感情は選べるんだよ、」
「選べませんよ、原田さん。選べないからこんなことになっているのです」
「嘘、選んでるでしょ?」

握られた手はとても熱い。指の先が熔けて落ちてしまいそうだ、それとも熔け落ちる前に灰になってしまうのか。灰になったとして侵食は何処で止まってくれるのか。

「俺ねぇ、感情を選び間違えていたんだよ。こんなに可哀想な一ちゃんを見る前に、させてしまう前に、もっと俺が閉じ込めてしまえば良かったんじゃないかって、」
「もう、遅いです、だって、もうどうにもならないじゃないですか」
「どうにかしてよって顔してるけど、」

自身がどういう表情をしているのか、斎藤は自身のことが全く分からなかった。期待している、それとも諦めが混ざった絶望を抱えているのか。
口角が上がっているのかさえ、もう両頬を掴まれていては分からない。もう行く末も戸惑う前に失墜していそうで。

「もう、これ以上は、原田さん」
「これ以上は、なに?出さないよ、ここからは出さない、絶対に出さない。もう絶対に、お前を逃がさない、逃がしはしない、逃がしてなんかやるものか」


閂が、一文字。


end

熄(うずみび)











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