古びた笊からザアザアと色鮮やかな物が庭の焚火へと消えた。
人間と違って一瞬で灰になるザマは、とても優雅である。
しかし、これを繰り返す沖田に何をしているのか幾度聞けども、返って来る言葉は丁重に安寧な同一句であった。

「折鶴を折ってあげるのです、折ってくれと頼まれていましたから。けどね土方さん、綺麗な千代紙で綺麗に折った折鶴をですね、目の前で破かれたらちょっと哀しいでしょう。ほんと、ずっとそれなんです。けれど私はそういう気持ち、分かる気がするなあ」

笊の中には首を粗雑に千切られた折鶴ばかりと、もう一つの笊の中には千切られた折鶴の首が何十羽、何百羽、何十個、何百個と蠢いている。
気味が悪い、土方が声に出して呟いてしまうと、沖田はやっと別の語句を喋り出した。

「私も気味が悪いったらありゃしませんよ、だって、ずっと麻縄を首に巻き付けているのですから。巻き付けたままずっと、俯いたまま私が綺麗に折った折鶴の首しか千切らない。何か、首に執着していたんでしょうか、ほんとにずっと。何を喋っても何も喋らないし、私の顔すら見て頂けなかった。だから土方さんなんか絶対見ませんよ、唯でさえ土方さん、西本願寺に屯所を移すだの、あーだこーだ言い合ってたし、口さえ聞いてなかったでしょう?…あ、もしやこうなってしまったのも土方さんのせいなんでしょうか、やだなあ、運命を感じるなあ、土方さん、いつから人の運命も左右出来るようになったの。ええとね、最期はですね、滑稽ではなかった、見事なものでもなかった、ただ、良い気持ちにはならなかったよ土方さん。死ぬまで苦しそうにぴくぴく動くし、私、折鶴を折り続けられなかったもの。」

力の抜けた沖田の手から、笊が落ちた。あっという間に火に巻かれ、千代紙と一緒に灰となってしまった。
灰となる感覚は一体どういうものなのか、土方は折鶴に問いただす。勿論何も答えてはくれぬ折鶴が点々と、ある一室までの道すじのように点在しておられるものだから…。





辿り着いたある一室で山南敬助という男が首を吊り、死んでいた。



end











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