2日目の朝になった。

首の付け根がジリジリ痛むだけで何ともない。だけど、僕が死んでないことは何ともなくはない。
口がきけるうちにと思って、通る人通る人にちゃんと恥ずかしがらずに声をかけた。
「あのう、僕を殺して下さいませんか?」
みんなは顔をひきつらせて逃げていったけどね、一人だけ協力してくれた人がいた。あのね、僕の首を四分の一ぐらい鋸で切ってくれた人なんだけど…

「お願いします、もっと首を切って下さい!じゃないと、僕、死んじゃうの!」

強くお願いしちゃったのがダメだったのかな?少しだけ流れた血がダメだったのかな?殺してと必死に懇願する途中で、ガタガタと手を震わせてどこかへ行っちゃった。僕の首を最後まで切ってから何処かに行ってよ、ありえない。

(まあどちらもおかしいよね、だってどちらにせよ死んじゃうのにね)

ただ、鋸で首を切って欲しかっただけ。磔台の上で死にたくなかっただけ。
あーあ、叶わない夢さようなら。

「野犬に食べられたかったな」


end

鋸挽
【memo】罪人を首まで地中に埋め、晒し場の側には「この者を鋸で勝手に切りつけてよい」という札と鋸が置かれた。通行人が鋸を手にして殺してくれればいいが、中々鋸を手にする者はいなかった。生きたまま2日間晒された罪人は、市中引き回しの後、磔台の上で処刑される。
主君や主人を殺した重罪人に対する極刑。











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