会いたいと思うのはタブーになってしまいました。僕は僕の顔を見られないまま、僕は貴方の顔を見られないまま、鍵を腰に引っ掻けているだけの人を見て、真向かいの死に絶える人を見て腐敗の臭いに耐えて耐えて、絶えてしまいます。

(触れられないから声をかけて見ようかな、あ、でも答えてくれなかったらどうしよう。無視されたみたいで嫌だな、うん、嫌だ)

ぎゅ、と恋人の腕を握るように鉄格子を握る。
ひんやり冷たい指先は、太陽も差さない地下室を一層震えるものにした。もう何度も何度も嫌になる。

いつ頭がおかしくなるのかと思っているんだけれど、それが分からないからどうしようもないよ。
貴方が教えてくれればいいけれど、貴方と僕は一生会えないまま一生抱き合えないままなのですよね。

足の爪をむしって口に運んだ。それを食べた。
喉を通っていく砕かれた爪に何とも思わない、また食べようと思って、今度は指の爪を噛んで飲み干して食事のように。

「僕はいつ狂うのかなあ、お慈悲を下さいませ」

獄吏は苦笑した。

end

幽閉
【memo】終身禁固刑として行われる場合と飢えと渇きで死に至らせることを目的に閉じ込める場合の二つがあった。











×