焼いた肉の匂いは好きだったが、羊はどうも苦手であった。あれは臭くて敵わん、だが、それよりも我が肉は臭かった、死臭の一歩手前のようであった。 「どうせ亡くなるから早く降ろせ、糞共」 先程まで眺めのよかった景色は煙に巻かれ、ちっとも見えなくなっていたし、顔を左に向けると左手の先は真っ黒で、動かせばボロンボロンと散っていった。 (どこまで焼き付くせばいいのだろうかね、) あーあ、勝手にすればいい。(失望したよ) 喉がドロドロに溶けて叫べやしないが、叫べるとしたらこう言ってやろうか、 「焼き尽くした灰はなおも危険なもの」 ってね。 叫べないからって不実行するのではないよ、この憎い憎い恨みを忘れずに灰にされ、糞共の身体に入って殺してやるっていう有言実行のお話さ、 end 火刑 【memo】忌むべき行為に及んだ者を、完全に地上から抹殺しようとする思想。近親相姦、同性愛、獣姦、妖術、毒薬使い、異端といった罪が当たる。 ← ×
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