「死んでいい?」
「駄目、」



駄目ってなんのこと、よく分からない知らない聞かないもの、知らない。言うと、ハチは困惑した顔で、僕の輪郭をなぞった。
「首、絞めて。」
「しないよ、そんなこと」
「どうして?」
「好きだから。」

(ふうん、厭きた、)
好きだからって言うのは気に入らない嫌いだから首を絞めないのも気に入らない生きているのも気に入らない。なのにどうして僕は君が好きで君は僕を愛して愛して愛し過ぎているんだろうか、 何故、(首捻過…マシタ。)


「自分勝手だなんて思わないよ、だって僕は自ら命を奪ってしまいたいんだもの、でもね、大好きなハチに奪ってもらったら凄く、凄く凄ぉく気持ちいい気がしてならないの、多分、きっと、気持ちがいいの。」

なにか、死んだ後に何か、が、輝いている気がした。(例えばねえ…、)ハチが死んでいる僕と性交しちゃったりとか、何度も何度もハチは精液を僕の躯にかけたがるとか、 ふふ、僕は真っ白になって笑ってあげる、ハチってばそんなに僕のことが愛しいんだ、って。それで僕は、照れたハチの上に乗って舐めるの、舐めるの自身の腕を。

「舐めるの、ハチの首筋も」

腰を掴まれたまま、そんなのは自分勝手じゃないのか、なんて言われたものだから噛みつきたくて仕様がない僕は自分勝手なの?我儘なの?殺したい?嬉しくて笑う?

「僕のこと嫌いになった?」
「なってないよ、」
「殺したい…?」
「そんなこと、しない」

興味ないよと言わんばかりに流し目をしたので此れは首を絞めるに至らないと思い殺されないという危機的ものを感じつつ、生きることへの不安と切なさが体内を下からぐんぐんと押し寄せ、襲う。
ぎゅう、う、ハチは僕を抱き締めるのが大好きです。僕はハチから抱き締められるのが大好きです。

大好き。

「死んだら躯を抱き締めても、雷蔵は無反応なんだよなあ、」
「うん、だからね、死んだ僕をたくさんたくさん愛せばいいの、死人だって精液ぐらい飲むんだから。」
「 でも、それだけ。雷蔵はそれだけだよ」
「……うん」

一層、僕を抱く力が強くなったので僕も切なくなってハチの頭をきゅっと強く抱いた。焦燥感が廻った。ハチが僕の名前を囁いたので僕はゆっくりハチの唇に顔を近づかせた。
左と右からテノヒラが、耳の後ろをするんと通り、合わさった唇からハチの長くて太い舌が入って僕の舌を僕の口の中で探す。唾液が口の端から緩やかに出てしまったので、それを舐めあげようと油断したその時にハチの生暖かい長いものに捕まってしまったのだ。
(薄く目を開けると、ハチが欲情した目で僕の眼球を見ているので、僕も欲情してしまい、自ら舌で応えながらハチを躯の上へと誘ってしまいました。)






「ど、して、首、は、絞めな、い、のに どお、して、ハチ、は、僕を、突く、の?」
一生懸命に肩を掴んで汗を滲ませながら言うと、君はピストンをヤメテこう返します。
「雷蔵、泣いてる?」
(泣いてなんか)
「泣いてなんか、いないよ」

仮にこの情事が既にもう、解らないほどザメツしてしまっていたとして、いくらハチが僕を愛してくれたって、ちっとも分かりやしないんだよ何もかも。そんなの、悲しくて堪らないからどうしようって、だから、だから困り果ててしまって何も葬って出来なくなっちゃった、ああーあ。


(殺していいよ、)
また君は否定的な態度をとるのでしょうか、

end

オートアサシノフィリア(自殺願望。自分が殺されることに性的興奮を覚える。自傷行為は別物。)











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