「情緒不安定なの?」


鳥の死骸を拾い上げ、障子戸の向こう側へ放り投げた。血は自分で拭いてよね、と話しかけてみれば、ウンと頷く。
今更ながら、

鳥が可哀想だ。
白い鳥だった。既に別色へ変わり果てていたわけだが、どうにも。


「三郎、」
「ん」


呼び掛け声に返事声。
名を呼んでみたものの、会話はあまりしたくない。会話をするには血生臭、頭が器用に働かず。
平行線が対角線。

きっと、あの死骸の頭部は、彼の掌で原形を止めていない気がするのだ。
ほら、ね、





「雷蔵、俺はどうにも虐殺癖が治らないらしい」
振り向いた目はギラギラの琥珀色。

「じゃあ、僕も殺すつもりなのかい?」
聞いたのが間違いだったと知ったのは、緩んだ頬が眼に映ったからで。



「雷蔵を殺すわけないじゃないか」



妙な不安定を抱いているのは、僕なのかもしれない。
三郎は口を真っ赤に染めて確かに笑っていた。


"ごちそうさま"、と。

end











×