「さぶろうは、ほんとに、激しい性欲をいだくんだね」 あたりまえさ、君だもの。君、だからだもの。 不適な笑みを浮かべると、まだ小さかった頃の自分を思い出しては甦っていく色の洗脳を恍惚とする。好んだ遊びというものは、動物の死骸を拾って、その腹部を切り裂き、内蔵をえぐり出すことだった。それを眺めたり手で弄ったりと、感触と流れる液体と臓器の形、臭い、構造にたくさんの興味が湧いてきたのだ。 (さっきまで生きていたのだと思えば、逆に虚しくなるぐらいの喜び!) やがてそんなことを思っているうちに、駆け回る動物を捕らえ、殺すようになってしまっていた自身の無慈悲さ。人間、いや、雷蔵を手に入れたいと考えたのは、おかしながらも最近のことである。 (異常だ!) 先程、雷蔵が言ったように、性欲の激しさは異常なほど止まらなかった。雷蔵の脱ぎ捨てた衣服、寝ていた布団、抜けた髪の毛、笑顔、オマエ、見るたび、激しいむず痒さに勃起し射精まで至る、ので、一日に八度以上マスターベーションとやらを行ったと記憶する、 「白濁が透明になるまでしてしまうんだよ、雷蔵」 そう言うと、君は首を斜めに傾げていた。 (嗚呼、) 雷蔵の事をぼんやり思いながらマスターベーションを行えども、遂には抑えきれなくなってしまった胸の動悸全身の震え、激しい頭痛。 (どうしたら、) 「なあ、今の表情、すっごく艶やかでいいね」 死体との情事は素晴らしかった。朝から晩まで死体と情事をし、口付けの雨を身体中に降らせ、ときには性器を弄くったり、くわえさせたり。それが一日もたてば、たちまち冷たくなり硬直するのだが、硬直が過ぎ去れば人間は再び生きたようふにゃふにゃに戻る。 (これだからね、肉体は何度も愛を求め歩くんだよ。) 床に寝たひんやりとした身体に触れるだけで興奮し、情事を激しく始めると体位のせいか、口からはボタボタ血が出てきたが、何とも思わずに性欲処理を続けた。 射精すればジワリと温かさが伝わって、なんとも言えない感覚に抱擁を。 が、イキモノなど結局、永遠ではないのだ。 「雷蔵だ、らいぞう」 顎から切り目をいれ、顔の皮を剥ぎ取ることは難儀を要する。特に鼻あたりを慎重に丁寧にしなければ破けてしまうのだ。 (ふふ、) ぺたんと自分の素顔に雷蔵の皮を貼って頭には雷蔵の頭皮を被った。ふわんふわんな毛は死んだって変わらない!殺したって変わらない!高揚感を持ったまま、そのままいつものように勃起と射精の繰り返し。 そうだ、骨は西洋のないふとふぉーくとやらにしよう!とてもお洒落だ。臓器は何日か前に食している。心臓がおいしかった。雷蔵はおいしかった。 「人肉共食鬼、そう呼ぶのかい?馬鹿らしい、愛の延長線上ではないか、こんなのは愛情表現に過ぎないのだから、では、素晴らしい性欲と過去に満ちた制欲に終了を告げる」 end エドワード・ゲインとベルトラン軍曹を参考に。 ← ×
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