「何処にも行かないでって言ったのに!」 そう意気込みながら最初に怒声をあげたのは、愛しい愛しい雷蔵であった。 ごめん、ごめんね、言わなければならぬ言葉を言おう言おうとし、口を蠢かした途端に、こうだ。 「もう何処にも行かないでね、」 狡くそう言い唇を舐める。 その生暖かい感触をもう一度確かめたく、自分の唇をズルリと舐め回してみたのだが、雷蔵の唾液を舐め取っただけであり、感触は既に消え去っていた。 二度舐めてくれればよかったのに、嗚呼。 冷たい壁に体を預け冷たい床に腰を下ろすと、君も。 引き寄せ抱き締めようとすれば首を横に振る、君が。 「嫌なの?」 「三郎こそ嫌なの?」 ―――あ、 何を舐めているか君はッッ 「嫌?」 「い、嫌じゃない全然嫌じゃないです、」 「本当に?」 「…うん」 そんな眼で見られてしまったら、もう、理性なんぞチッポケに丸めて投げ捨てるしかないではないか。 意が決まれば、ユルと手を休ませる訳には行かないでしょうに、イタダキマス。 この自慢の、中指で、君のソコを捉えて、 「だめだよさぶろう」 「…な…ッ」 ギュ、忍び寄った両手を掴まれてしまった。 合わさった両手、指の付け根から兎にも角にも愛しすぎる者を感じている。 振り払えさえすれば、直ぐ様に君を押し倒し、いくらでも叫ばせてあげる事が出来るのに。 仕方のない事だなあとボンヤリ扇ぐ。 途端の快楽に。グ、下唇を噛みながら愛しき者の温かい手を握ると、還ってきた更なる暖かみ。それを妙に嬉しく想いつつ、顔を綻ばせながら股に埋もれた雷蔵の狐色の髪だけを見下ろした。 なんと可愛い奴。 先からトゥルンと、 銜え込んだまま 微々たる舌圧。 その行為に幾度、躯を震わせ奮わせウットリ息を吐き天国を、視た事か。 雷蔵が其の、更に大きくなった陽物を口からネットリと出し、蜜が溢れ出る先端に口付けを行っている間すら萎える事を知らない。 我ながら其れは偉いとも思うのだ。支えられてもいないハズなのに、シッカリと、熱を帯びて起立する。 そんな事を腹の底で考えていると、雷蔵の口がククッと其れを吸い上げた。 尿道の中に雷蔵の舌が入って来てくれるのならば…と、如何にも馬鹿らしい考えを起こして眼を閉じると、ヤバイ程の淫行が頭を。 まさに、自慰をしている、ようだ。 (だとしたら…ッ) ちろりと雷蔵の顔見つめ、嗚呼なんと舌舐めずりを抑えきれぬ。 陽物の疼きすら、も。 「雷蔵、その、其処ばかり、弄られると、ねッ、」 艶めかしい音だけが。 「雷蔵…だから、あの、」 聞いてないね、 聞かないね、君。 そうしている間、 どくどくドク トクトク、あ、あ、あ。 あ、 「……ゴクリ」 微かに聞こえた喉の奥。 放出した白い白い精虫は今、雷蔵の食道を通って胃に溜まろうとしている。 だからその胃を触らせて欲しいのに、その胃を。まだ手を絡ませたまま手を離してくれないものだから、また陽物を口に銜えたものだから。 俺は快楽の声を出すしかないのだ。 どうせ快楽を味わうぐらいなら君の中へ射れてからだな、そして快楽の声を聞くのなら君の声をだな、……そう言えば君、今日は珍しく積極的なんだね。 「……痛たた、ごめん」 心を読まれたように余計なお世話だと歯を立てられた、うん、幸せ。 そればかりか、少し眠い。 壁に背中をつけたままズルズルとゆっくり身を横に倒して行くと、絡ませていた互いの手はパラリと離れてしまった。 これを望み、自ら乱交の先を駆使しつつ楽しみたかったのにも関わらず。 (眠気は最大の敵) だが陽物はまだ上を向いて勃っている始末にある。 さすが、俺の、彼処。 と思っていれば、後を追うように雷蔵は天井を仰いで居るモノに食いついた。 色のある声が出たのは仕方ない事だと思います。 「本当に君、雷蔵、どうしたんだ、ねェ…きみ」 「喉が乾いちゃって」 ああ可愛いッ。 「俺は寝る、けど、…イイ、かな……?」 「おやすみ、三郎」 左にあった掛け布団をバサリと雷蔵の頭に被せ、満足気に眼を瞑る。 布団がモゾモゾと動く度に、艶やかな水音が子守唄となり脳天を優しく貫いた。 「……おやすみ、らいぞ」 あ、精虫が、ギゥと出た。 木漏れ日、でもないが。 子守唄は続いているのに、真っ当に昇った太陽が有り得ない程厭らしく。 淫の匂いで目が覚めてしまったのは、そう珍しい事でもない。ただ少し、酔いしれる気持ちが僅かに躯を廻り巡る。 いつも居るはずの左二の腕に、雷蔵の頭は無かった。 「……は」 視線を真下に下ろすと、未だ陽物を口に含み、小刻みに揺れる狐色の髪、が。股ぐらに素晴らしく。 「らい、ぞッ!」 バッと肩を優しく押し上げて見ますと、その反動で勢いというモノがついてしまったのか、目の前の赤い口からタラリ、ボトリ、糸を引きつつ透明な液体が零れ出てきたのです。 あーあー 勿体ない事をした。 (射ッている途中であったのか…) 「もう喉の乾きは収まった?」 「お腹いっぱいになったよ、有難う三郎」 「んゥ、恥ずかしいな」 其の、はだけた寝間着の奥、膨れた胃は俺の、俺の精虫で沢山なんだろう、ね。 触りたい、昨日からそう思ってはいたものの、やはり君、触らせない。 「まだ喉が乾いてるの、」 そうかそうか、 たくさん たくさん 飲めば良い。 肩に手を回してきた雷蔵は、その艶を含んだ唇を滅法飢えた唇に合わせ、何かを欲している。 自然と合わさる熱い躯のおかげで、唇以上に全身へと飢えが拡がった。 「ね、雷蔵。そろそろ交代しない?昨日からしたくてしたくて堪らなかったんだよ」 「うん。あまり胃を揺らさないでね、気持ち悪くなっちゃうから」 そっと雷蔵を寝かせて足を持ち上げ開かせた。俺が毎日欲情しているその二本の足は、スルリと背中に艶かしく巻き付く。 (これは約束事だよなあ) にこりと笑うとにっこり可愛い顔で雷蔵は笑う。乱れた長い髪が汗の滲んだ首に張りつき、下肢を異常なまでにそそった。 (早く早く雷蔵を――、) 今日はどんな顔をして哭くのだろうかどんな顔をして身を捩らせるのだろうかどんな味がするのだろうか! (掴んだら、離さない、つもりでした) 「あ、れ ?」 「どうしたの、三郎」 (あれ、あれあれ、) 「ねえ早く抱いてよ。僕こうやって足を絡めて待ってるんだよ」 (嘘、あれ、嘘だ、あ、あ、ああああ!) 「らいぞ、らいぞう!おまえ!!」 咄嗟に雷蔵の胃を弄りながら、自身の陽物に手を掛けた。 (――――冗談じゃあない!) 「三郎ごめんね、食べちゃった」 (なん て、キらきラ してる、君ノ赤イ 歯 ) 「ねえ早く抱いてよう」 (震えがクルのだ。) 長い中指を、雷蔵の中に射れると、かき混ぜる前に、君は不満そうな顔をしてこう言いなさる。 「ねえ、三郎はどうして僕を抱いてくれないの!」 痙攣投与開始に、発狂。 無痛発生を確実に予知できる方法なんぞ、2経路による問題だと生体に、漸増。 総投与量、赤。 君に、保存認めたし。 (壊死しそう、だ) 泣きそうな君の顔を必死で愛してると叫びたい叫べないどうしようもない血が臭い臭い臭い! (雷蔵を抱きたいんだよ、しょうがないだろう愛するおまえが食べたのだから。ああそうしたら、君の胃は今情事中なのだねえ、俺、君を体内から抱いているのだねえ、) 「僕ってばちゃんと三郎から抱かれてるんだ。お腹が熱いもの。いやだなあそういうの、照れちゃうんだから」 雷蔵を優しく抱き締め髪を薬指に巻き付けた。 さあ、壊死、しましょう! end ← ×
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