自分の愛する者が誰かに犯されてしまったとして、それは非常に殺したい気分になるのだけど、その犯してる相手が同じ組の友人で、犯されてる愛しき者が自ら腰を振り悦んでいたとしたら、

(雷蔵ってば、あんな声も出すのか、可愛すぎるではないか)
まず、そう思った。

「はち、愛してる」
なーんて可愛い雷蔵から息も絶え絶えに言われているお前、竹谷め、いつから俺の雷蔵を奪ったのだ。
(別に奪われようが今のところ雷蔵とセックス出来てるからいいのだけど、)

そんなことを考えながら天井の傍らで傍観していると、薄暗いながらも雷蔵の気持ち良さそうな顔がグングン目に入る。しっかりと竹谷の肩を掴み、足を開かせられている姿を見ると、とてつもなく堪らない。自身もコレで一発抜けるな、とか思うわけで。極めつけは床が鳴る音や、肌が打ち付けられる音と、それからいやらしい程のミズオト。
(グチュグチュって、そりゃ反則だろ)

傍観すればする程、あっという間に行為は終わってしまった。
「もう少し続けたいんだけど」と言う竹谷に、「三郎が待ってるから」と断る雷蔵。
(俺ってかなり雷蔵から愛されていないか…?)

「はちの事、愛してるよ。だけど三郎は僕がいないと駄目なの」
軽率に帯を巻く雷蔵は、本当に本当に本当に本当に愛しいと思う。お前が竹谷の事を愛していても、俺の事を愛していなくても、お前の頭の中には俺が、俺がいつもいるわけだ。
自身の下肢さえ見えぬ真っ暗な天井裏で、ニンマリ笑ってしまった。




「三郎、遅くなってごめんね」
「委員会お疲れ様」
読みさえしない本をパタンと閉じる。心の底ではクツクツと笑っている。(少しと言わず、盛大に遊んでやろうではないか)

頬に手を添えながら。
「雷蔵、おまえ汗だらけじゃないか」
「走って来たからだよ」
ああ嘘が上手いこと。下手なこと。

「少し青臭いぞ」
「やだなあ、三郎」
「…ね、まさか竹谷に抱かれてきたのではあるまいな?」
ギクリと肩を揺らした君を、そのまま、後ろへ押し倒してしまっていた。見てみぬフリをしようと嘘をつかれることが大嫌いだって、知っていただろうに。隠し事も同様、殺したくなるのに。傍観から繋がる何かって、こんなにもドロドロとした汚いものになるんだ。感情と本能だけで生きている事を改めて理解すると、なんだか寂しくなるばかり。
(ばっくん、胸が空洞化されたようにね)


「もっと気持ちいい顔して啼けばいいだろ!竹谷とセックスしてた時みたいに!」
あまりに雷蔵が下で大泣きするので、苛々とした。そればかりか、ジタバタと激しく暴れるので、拳を握ってみるとギュッと目を瞑りビクビク怯えながら大人しくなる。「殴るぞ」ただそう言ったのかも知れない。

それから大人しくなった雷蔵を抱いてはみたが、一向に肩を掴んでは来てくれず。
(俺だって失望の一つや二つ、きちんとするのだ。)
つまらなくなった途端に、雷蔵の髪を鷲掴みにして冷たい床へと投げ捨てた。


「傍観する方がセックスを感じるなんてね、」
残りの蝋燭の火がユラリと蠢き多少の気味悪さを感じたのか、雷蔵は震える手足で後退りを始める。
(言ったじゃないか、おまえ、俺にはオマエが必要だって)

「もう一度竹谷のところに行ってさあ、啼いてる姿、早く見せろよ。」
髪を持ち上げて廊下までズルズルと引きずり嗚呼泣いてる、君、啼いてるね。その顔に発情してしまう俺は、君を一番愛しているんだよ。


泣きじゃくって
嗚咽を繰り返しながらも
「…はち、僕ともう一回セックスして下さい」
静かに部屋から漏れた弱々しい声に、甲高い笑い声を浴びせるしかなかった。だって、所詮それしかないだろう?

(今度はどんな顔をして喘ぐのだろうか)



後味よくだなんて
一生させはしない。

君の所有権は俺なのだから。

end


何を考えているのかサッパリ分からない、鉢屋氏。











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