「くびを絞められてくるしいとおもった瞬間がね、すごくきもちいいんだって」


三郎は、僕にこう教えてくれる。実際、なんのことを言っているのかなんて、相当分からなかった、気がした。
だって、なんでクビを絞めるのか、なにがキモチイイのか、はてさて今でも分かる気がしない。


「なに、考えてる?」


天井と、三郎しか目に入らないけれど、本当の僕は三郎の左瞳しか目に入っていないんだと、犇々感じて揺さぶられて。
それさえも目に入らない時は本当に、本当に余裕がないのだ。

自分で理解しきれていないなって。もうどうでもいいから、早く、終わって終わって。
「気持ち良いね、雷蔵」
確かにそう言われた分だけ頭を縦に振ればいいと自覚症状はあるというのに。僕は、そんな訳が成立すると思っている。甘いね、三郎はにっこり笑うだろうが、それは、それで、それがいい。

「雷蔵、」
「ん」
「どうなの?」
「うーん…」

軋む音が止まり僕と同じ顔の、瞳だけ違う三郎の顔が覗き込まれた。
(嘘でも言っておけばよかった、一言でも)
もう遅いのだと後悔のように想った途端にこうなる。予想は、ついていた見えていた、僕の頭のウラガワ。

(死ぬのではあるまいか)

喉がグッと鳴り、それがガッと鳴れば始まる前の前兆という果てしなき一歩手前である。
妙な吐き気が沸き上がり、嘔吐しようと臓器が寄れて涙が漏れて。涎は、出てこない。
(ああそうか、涎は死んだ後に出るのかな)
うん、そうだよね。え、ちょっと待って、僕、というか君、三郎!おまえ僕の首を両手で絞めているではないかッ!(何故何故何故!)

鼻で酸素を吸い込もうとしたっていうのに、喉がズウズウと鳴っただけで息という面倒くさい行動はできやしなかった。
さて、人間、息が出来なくなりますと、どうなるのでしょうか。引き付けを起こすのです。ビクンと片足が激しく上下に揺れてね、

「雷蔵、あまり締め付けるなよ、快楽に涎が垂れてしまうだろう?君の頬にさあ、」
(全く!僕は涎も垂らせないというのに!それに頬じゃなくて首に垂らしてるじゃないか!後で綺麗に舐めとれよ!)
「もうちょっと、締め付けてくれないかな」
(馬鹿、馬鹿!三郎の阿呆!)



体内に熱いモノを感じた。首からはゴキンという音がした。転がった。

「猟奇テキ、サツジン。バンザイ」

あーあ、下肢だけグチャグチャだなんて。でもきっと、三郎の事だから、転がってる僕の首を持ち上げて、涎を垂らした血にまみれた涙で汚れた、僕の口にソレをくわえさせる気でしょーね。

「精液、首から出てくるよ」
「いいんだよ別に。雷蔵がくわえてる事に変わりはないのだし、」
「ふうん」
「ちょっと待って、後、アト三回してからね、」
「…変態さぶろう。」


少し離れた場所から首なし屍と戯れる三郎に少し、少しだけ妬けた。あれ、僕の体なのに、僕ってば自分に妬いてる。ふふ、可笑しい。
下肢も、それから顔も白くグチャグチャになるだろう事を思えば、

僕は僅かに照れてしまった。


end

ネクロフィリア(死体愛好家)











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