「もうダメだ、終わってるな俺」
「うん、終わってるよ」

パシィ―――ン!すかさず久々知の後頭部に平手打ちが入った。

「いった…!何で叩くんだよ三郎!俺はお前が終わってるって言ったから優しく終わってるって助長しただけなのに!」
「そんな優しさいらねぇよ!もうちょっとなんかフォローしろ!」
「はぁ?」

久々知の呆れ顔に鉢屋は益々イラつきを煽られたのか、益々機嫌が悪くなる一方である。
しかしいくらこの二人が険悪なムードになろうとも、竹谷と勘右衛門だけはニコニコとお酒を酌み交わしていた。


――ここは五年ろ組である鉢屋と雷蔵の部屋である。
そっと辺りを見渡してみよう。至るところに酒瓶が転がり、哀れなことに一人、雷蔵だけが酒にのまれて潰れている。スヤスヤと寝ているだけならいいのだが、雷蔵の寝顔は皆の酒の肴になってしまっているようだ(特に鉢屋)

「ああやばいやばいやばい…」

さっきから鉢屋の言動が揺れに揺れている。
何故なのか…、それは鉢屋を見ればすぐに分かるのだが…一応説明を加えておく。

男には、異様に性欲が沸き起こる日がある。齢十四という事も関係あるが、何に対しても敏感に反応してしまうのだ。見たい触れたい感じたい、三つの性欲三大要素が頭の中を駆け巡る。

そして、彼は雷蔵という大好きな友人を目の前にして、もうどうしようもなく前屈みになってしまうのであった。(辛いものである)

「早く厠行ってこいよ」

汚いものを払うように久々知は鉢屋を扱う。
だが、理由はしっかりとあるのだ。

「もう何回目だよ、ちゃんと手洗ってこいよな」
「うるせーな兵助は!まだ八回目だよ!」
「もう八回目だぞ!」
「今日は二十回イクなこれは、うん、何だ今日は…きっと雷蔵のせいだ」
「お前いつも雷蔵のせいにしてるだろ!やめろよ!俺の親友をネタに使うな!」

深夜に下の話をギャーギャー言い合う…。迷惑なことこの上ない…。
そこに勘右衛門と竹谷が茶々を入れてくるため、話は大きく盛り上がり朝まで語り明かす日が多いのだとか。

「さぶろ〜俺は最高十七回したことあるぜ?」
「八左ァお前ナニしてんだよ…。つかアレか!?1日中部屋にこもってた時か!?」
「そうそう!限界目指してみた!夕方らへんマジちんぽ痛すぎてやめたわ」
「やっべ〜!!」

竹谷は鉢屋の盛り上がり具合を、更に上げてしまう第一人者でもある。
だからといって、い組の勘右衛門と久々知が盛り下げるなどということではなく、い組の冷静な言動が鉢屋の心に真っ赤な火をつけている。

「お前らさ、そんな何回もやってたら身体に悪いよ絶対…」
「俺も兵助の言う通りだと思うよ?大体何回もやるより我慢して我慢して、最高の快感を求めた方がいいよ」
「勘右衛門てば凄い助言を言うんだね」

自慰についてのオススメを聞いた鉢屋であるが、彼は我慢ができない男"鉢屋三郎"である。だからこそ、雷蔵に手を出してしまいそうになりながらも必死に自我を食い止め、結果自慰をし続けるしか発散方法はないのだと偉そうに言う。

「ちんこ痛くなるけどさ、やっぱ勃つんだよな。あぁ…雷蔵とヤりたい…」
「一生無理だと思う」
「兵助黙れ!お前なんかに俺の気持ちが分かってたまるか…!雷蔵の隣に寝る俺の気持ちが…!」

悲しいのか虚しいのか、鉢屋は頭を抱えて嘆いた。

「我慢しようと思っても駄目なんだよなぁ…」
「そんなに雷蔵の影響ってやばいの?」
「勘右衛門、お前知らんだろ…雷蔵の威力を」
「でもほんとに可愛いよね、雷蔵は。ほら、この寝顔なんて…」
「うん可愛い。雷蔵に顔射したい」
「分かる分かる」
「あっ、でも自分でやってから顔射とかつまんないからさ、やっぱ雷蔵を突きまくってからイクってところでビューって顔にかけたいな」
「分かる分かる」
「だからもう勘右衛門やめろよ!鉢屋をその気にさせるな!竹谷からも何か言ってやってくれ!」
「分かる分かる」
「お前らいい加減にしろ!!」

久々知が吠える。鶏が鳴く。夜が明けるのは案外早いようだ。薄暗くなってきた山の向こうから、太陽が顔を出す刻は近い。

「雷蔵を後ろから突きまくってアンアン言わせたい!でも座って下から突いてもイイ!やべっ勃つ…!」
「え〜…まず前戯でしょ。雷蔵の上に跨がってゆっくり腰ひも解いて…」
「ああやばいやばい!!勘右衛門それ以上は…!!」
「ふふ、言ってあげる。まず口吸って乳首吸ってェ、乳首弄りながら下帯の上から雷蔵のちんちん触るとかどう?」
「いい!あ〜…雷蔵どんな顔して喘ぐんだろ…!俺あれだよ、雷蔵専属ちんこになりてぇ」
「てゆーか三郎、ちんちん勃ってるよ」
「うわっ…だから雷蔵のせいなんだって…これもう勘弁して…」
「八左ヱ門もちんちん勃ってるよ、さきっちょ濡れてるし」
「ちょっ…!嘘っ!?」

朝方でも深夜並みの会話は延々と続く…。気力と精力はやはり等しいようだ。

「よし、朝方一発の欲を抜いてくるか八左」
「おうよ!」
「勿論俺のズリネタは雷蔵だからな、雷蔵取んなよ?八左は兵助でもネタにしてろ」
「俺は兵助でも普通に抜けるからいーよ!」
「なんで俺をネタにするんだよ!やめろ!」
「あぁー…雷蔵とちんこ一緒にこすり合わせてェ。でも、八左よかったな。兵助とちんここすり合わせられる日は近いぞ」
「そうかな」
「そんな日はねぇわ!!いいから行ってこいよ厠!!」

久々知の怒声を受け流しつつ、鼻唄を歌いながら竹谷と鉢屋は部屋を出た。その鼻唄は恐ろしくも朝の空気に浸透する。
厠に入ると、下半身に一生懸命集中しながら、想像を膨らませるであろう…若さゆえに。

「ねぇ兵助、三郎の性欲すごいね」
「勘右衛門が吹っ掛けるからエスカレートしたんだっつの!!」

面白がる勘右衛門を一度睨みつけると、転がる酒瓶を片付けながら久々知は大きな溜め息を吐いた。




飽きず、懲りない…。これが鉢屋の性欲を日々満開にさせ続けている。
あまりの性欲の強さに、久々知は雷蔵の身を案じて雷蔵の良き先輩である中在家に、真剣に相談をしたらしい。


次の日、

「雷蔵、今日から雷蔵は中在家先輩の部屋で、七松先輩と川の字で寝ることになってるから」
「えっ!?兵助なにそれ!?」
「いいから…。もう少ししたら七松先輩が迎えにくるから一緒に行くんだよ」
「えぇっ!?そんな…緊張するよ…」
「大丈夫、部屋より凄く安全だし。というか絶対雷蔵のこと守ってくれる人達だから。最強だから。三郎が唯一苦手な人達だから」
「三郎が…?…兵助、何言ってるかわかんないんだけど…」
「雷蔵はわかんなくていいんだよ」

鉢屋の性欲を擽る雷蔵であったが、久々知の母性本能も引き出してしまう雷蔵の存在は、とても大きい…。
また、六年生からの信頼も厚い雷蔵は、皆から愛され過ぎている。
六年ろ組が雷蔵を護衛し、は組は鉢屋の性教育、い組は鉢屋を抑える役に回った。
…そんな雷蔵を守ろう精神が強まったおかげで、鉢屋は死ぬほど寂しい思いをしているのだとか。
これを期に、なんとか自慰を三回に納めることが出来た鉢屋であったようだが…

「そうだ、勘右衛門が言ってたように我慢して我慢して、最大級の快楽を追求しようかな」

まだまだ性欲の勢いは恐ろしいほど消えない変装名人ならぬ、変態名人であった……。


end


>>アリアンヌ様
リクエスト有難う御座いました!
性欲が止まらない鉢屋だけではなく、五年みんなが性欲満々な話になってしまいました;(でも性欲の覇者はダントツ鉢屋です)

忍者の三禁を軽々しく破っていますが、年頃の男の子ということもありますので…(笑)そんな男の子の最低な会話を楽しんで頂ければ幸いです。
あと、鉢屋はちんこって言うし竹谷はちんぽって言うし勘ちゃんはちんちんって言うし、彼らなりの個性を出したのでそこらへんも楽しんで頂けますと嬉しいです…!

やはり雷蔵は愛されキャラだと思うので、雷蔵←五年の方式を取りました。
下ネタだらけの五年生も好きだな、と改めて実感できました(笑)
(リクエストに沿えておりませんでしたらば、誠に申し訳御座いません…!)


130303











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