「もしかしたら俺ら、すっげぇ幸せなんじゃねェか、新八よゥ」
「そうかもな。そうそうこんな上玉、おなごにも滅多にいねぇ。それがこいつら、男だもんなぁ」

寝そべりながら片肘をつき、原田と永倉は上玉と呼べる男二人を、まじまじと見ていた。
栗色の髪をした青年は縮こまるようにスヤスヤと寝ており、その隣には紺青の髪色をした青年が、珍しくも大胆に足をさらけ出して寝ている。

「しかしホンット新八は幸せもんだぜ」
「あ?何で俺だ?」
「忘れてるだろ、俺も上玉だってこと」
「てっめ!俺の立場ねぇじゃねぇかよ!」
「なんで?一番いいじゃん新八。上玉の俺ら選べるぜ、よりどりみどり〜ってな」
「るせぇえっっ!何気俺は傷ついたぞ!」
「新八はやっぱ一ちゃん選ぶのかなァ〜?一ちゃんのこと好きって言ってたもんな、新八」
「だぁぁアホンだらァア!」
「…はじめ、好き、い」
「「あ…?」」

ムニャムニャと口を動かしながら、ボソリと喋ったのは永倉の隣で寝ている平助だった。しかも斎藤へ愛の告白と来たものだから、ドキドキ感は隠せない。
原田はニヤリと笑い、自分の隣で寝ている斎藤に触れようと、ゆっくり手を近付ける。(この男二人、寝ている平助と斎藤を挟んで寝そべっているものだから、相当質が悪い。)

「おい左之、何してんだ」
「いや、平助も一ちゃんのこと好きなんだなーって思ってよ」
「じゃあお前のイヤラシイ手は何処を触ろうとしてんだ」
「ん、一ちゃん」
「何でだよ!」

永倉のツッコミが過熱し、平助の顔に唾がかかったらしい。平助は眉を歪めて更に縮こまってしまった。

「考えてみろよ新八ィ、一ちゃんの太ももは中々触れないぜ?」
「いや、まず無い。触れる前に数々の平隊士が死亡した」
「な、俺らおいしくねェ?」
「まあ、な」
「ほぅら、すっべすべ〜」
「おまっ、勝手にハジメ触ってんじゃねえよ…!」
「え?」
「い、いや、何でもねぇ…」
「新八も早く触れって。二人の内緒事もたまには悪くないよ」
「よしキタ!男の内緒事だもんな!」
「おうともよ」

永倉は平助の身体の向こうにある斎藤へと手を伸ばす。
勿論、内緒事と称したイヤラシイ事実、別名"男の契り"を斎藤は知る由もなく、簡単にお触りを許してしまったのだった――。

「つぅか俺らどんだけ飢えてンだろな」
「これは飢えじゃねぇ、欲だ」
「うわ、うめぇ…土方さんの俳句よりうめぇコト言ったぜ左之」
「だろ?」

ススっと、原田の指先が斎藤の足を撫でたその時…「ンゥ」と色っぽい声を出しながら、横向きが自然と仰向けになった。
そのまま起きてシアワセの時間は闇に墜落すると思っていたのだが、運良くも二人は救われる。どうやら、ツイているらしい。鼻血が出そうだと原田は呟いた。

「なあ新八、これを食べずにいろってか?」
「無理だな」

それもその筈、仰向けになったため少し右足は曲げているものの、白い下帯は丸見えで、はだけた着物は鎖骨を妖艶と演出していた。

「「どっち食う?」」

そして「せーの、」の声をかけ間が空いた瞬間…

「ぅ、…う、ぎゃあああああっ!」

刺激が強すぎたのか、斎藤が物凄い勢いで覚醒した。ハアハアと息を切らしながら暗い部屋をキョロキョロと見渡す。
「今…確かに…」
(虫なんかじゃないだろうな、虫だったら死ぬ!)
色んなことを想像しながらバクバクした心臓を押さえるが、まさか原田と永倉が自分自身を触っていたなんて、想像すらつかないのだろう。
隣で寝ている原田と、平助の隣で寝ている永倉を見るなり、原因は自分だと理解しようとする。寝たフリを活用されているなどと、全く予想すらつかない。

「淫夢か…」

呟いて再びパタリと寝る斎藤に、背を向けたまま原田は静かに噴き出した。


それから二人の悪戯は酷くなるばかりで、耳に舌を入れられては覚醒し、イチモツを握られては覚醒を繰り返す。
だが、当の本人はナメクジではないだろうかと本気で青ざめるばかりで、反対に天然を発揮する。それが永倉と原田を刺激するのは、全く十分な話であった。


「一ちゃんいい匂い。もう俺、厠に行かず寝ちゃおうかな」
「夢精しても知らないぜ」
「そういう新八こそ大丈夫なのかよ」
「ぶぁーか、俺ァ左之と違ってハジメになんか早々欲情しねぇっての」
「ふぅん、さっき二回も厠に行ったの誰かなぁ」
「ちげぇーよ!アレはしょんべんだっつの!」
「はいはい」

ギャアギャア言い合いながらも、二人はとんでもない所に手を忍ばしたまま、遂には寝てしまったようだ。
あまりの暑苦しさを覚え、斎藤が起きてしまった時には既に遅し、淫夢の現実はあてがわれていた…。


「なッ、に…!」


(身動きが取れん!)
項に唇をつけたまま寝ている原田の手は、斎藤の身体をしっかりと絡め取り、片手は胸を弄るように侵入を許している。
永倉はというと、斎藤の太ももに顔を乗せたまま寝ており、何故か大きな手は尻たぶを割るように添えられていた。

(何なんだコレは…!まさか、こいつら平助にまで手を出してないだろうな!?)

ガッと隣で寝ている平助を引き寄せ、手探りで身体を確かめる。どうやら、着物は乱れていないようだった。
斎藤はホッと安堵の溜め息を天井に向かって吐く。

(眠たい…しかし色々と重い…けど、眠い)
睡魔に蝕まれながら平助の髪を優しく撫でた。唇が、触れそうだ。

「お前と二人で寝ていたはずなのに…な」

ややこしい事は考えるまいと、ギュウと平助を抱き締める。
距離が縮まったせいか、ちゅ、と平助の唇が頬に触れた。

「一、大好き…もっと、して…」
「なっ…!?」

完璧な寝言ではあったが、斎藤の顔が真っ赤に染まるまで、そう時間はかかっていない。
「へぇすけ、可愛い…」
誰も聞いていないことを良いことに、ボソリと呟き斎藤は平助の鼻をやんわり噛んだ。
それからスヤスヤと、やっとの思いで朝まで眠りに落ちていく――。



――翌朝。

「誰ですかっ!この子たちにこういう事を教えたのは!まるで春画のような交わりで寝ているじゃないですか!土方さんですかっ!」
「ちっげェェよサンナンさん!!」

本気で勘違いを起こした方もいた。


end


リクエスト有難う御座いました!
リクエスト通り書けましたでしょうか;しかし素晴らしき内容をどうもです!最後は山南さんと土方さんにしめてもらいました(笑)過保護なんです´`*


101003











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